第38話 結婚を餌に……
「貴族だろ!? 貴族の結婚ってカードのひとつじゃないのか!?」
俺はロリアに喰ってかかるように言った。
信じられなかったから。
貴族に自由恋愛は無い。
何故なら……全部カードであり、政治の一部なんだと。
そう、姉さんに聞いていたんだけど。
でもロリアは
俺のそんな剣幕に心底困った顔をして
「そんなことをワッチに言われても仕方ねぇっすよォ。何せ公爵でしょォ? 陛下の臣下の中では1番偉いわけですしィ、その分我儘利くんじゃ無いですかァ?」
うーん、まぁ、そうなんだけどさ……。
何を考えているんだろうね?
日々の生活が暇過ぎて、気まぐれでそういう大会を開いて騒ぎたいとか?
それとも公爵令嬢が我儘の化身で、強い男で無いと結婚したくないって言って、膨れっ面をしてるとか?
そうして、俺が困惑していると
姉さんが真面目な顔で
とんでもないことを言い出した。
「アルフ、とりあえずその試練というヤツに参加しましょう。出来れば今すぐ」
えっと、ちょっと待った。
「えっと姉さん、俺は結婚しなきゃいけないの?」
三種の神器の1つを手に入れるために?
動揺してしまう俺。
俺にはそういう発想無かったし。
出来れば避けたかった事態だ。
俺は結婚をカードに使う気は無かったから。
俺だって、出来れば好きになった女性と結婚したいし。
金目当てとか、地位目当てで結婚相手を決めるのは何か嫌だ。
だけど
姉さんはそんな俺に
「……冷静に考えるのね。これを額面通りに受け取っては駄目よ。本当に、公爵様が婿募集の難題吹っ掛けをしてると思うの?」
……教えてくれたよ。
姉さんの考える裏事情を。
姉さん曰く、公爵家は試練と称して何か難題を解決したいんじゃないのか、と。
別に、本当に婿を選びたいわけじゃないんだ。
そのために試験させるわけじゃないんだ。
目的は婿を選ぶことではない。
その過程の試験のクリアなんだと。
それに対して俺は
「じゃあ難題をクリアしてくれる人を募集しているって言えば……」
必ずしも結婚のカードを使う必要無いじゃん。
貴族の大事なカードを温存できるじゃん。
そう思ったんだけど
姉さんは
「それは自分に問題解決能力が無いと宣伝するようなものよね」
あー……
なるほどな。
貴族も面子を大事にするはずだし。
恥を晒すようなこと、なかなかできないよね。
だったら……
「難題をクリアして、その後何か面子を壊さない理由をでっち上げてもらって、俺たちが結婚を辞退すれば、ひょっとしたら鏡の貸し出しを認めて貰えるかもしれないってことか……」
俺の言葉に
「なるほど。それは素晴らしいアイディアですわ」
ジェシカさんが賛同し。
……こうして、俺たちパーティーの方針が決まった。
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