第85話 呪いの囁き
最後に残った1人が死ぬ?
今、誰が囁いた?
俺は周囲を見回した。
けど……
周りには何も変なものは居ないし
俺の他は誰も何の反応も返していない。
他の仲間は、行く先の壁や床を見回して、罠を警戒しながら歩いてる。
先頭を行くロリア……率先して罠を警戒してくれているロリアについていく形で。
皆、何も聞こえていないみたいだ。
あんな聞き逃せない内容を囁かれたのに。
……どういうことだ?
俺以外は聞こえてないのか?
ということは気のせい?
一瞬、ワケが分からなかったけど。
俺の聞き間違いだと思うことにし、無視……
しようと思ったが。
通路を進んでいく間に、どんどん、不安が持ち上がって来る。
まるで闇が押し寄せてくるみたいに。
……ひょっとして……
俺しか囁かれていないのか?
そうすれば、俺に選択肢が生まれるよな……?
即ち……
誰を死なせるのか?
そういう選択肢が。
俺だけが知ってるなら、俺が誰を最後尾に設定するかで犠牲者の選択が出来てしまうから。
そんなのダメだ。
仲間なんだぞ。
俺が聞いたことを皆に言うべきなのか……?
この階に最後に残った者は死ぬ運命になってる。
そのことを。
そうすれば、皆で皆が助かる策を考案でき……
そう考えたとき、俺の脳裏に
血走った目で、こぞって上の階の階段に群がる仲間たちの姿が浮かんでしまう。
見たくない光景だ。
最後の1人になりたくないばかりに、階段を上ることが地獄の椅子取りゲームになってしまう。
最悪の光景。
そんな想像を一瞬でもしてしまった自分に嫌悪感を感じる。
そんなの……仲間たちへの侮辱じゃないか。
でも……
告白する勇気が無かった。
命惜しさに仲間を蹴落とす地獄絵図が生まれたらどうしよう?
その恐怖に負けて。
そしてそんな踏ん切りがつかない状態のまま
「あ、階段ですネェ」
ロリアの言葉通りに。
俺たちの目の前に、3階への階段が見えて来た。
……俺は。
覚悟を決めた。
あれは脅しだ。
それに、ジェシカさんがいる。
俺が死ぬほどの何かを浴びせられても、多分回復させてくれるハズ。
そのために、ジェシカさんには最後から2番目の立ち位置を取ってもらって、俺が倒れたら速やかに……
そう、頭の中で「万一の事態が起きても俺が生き残れる策」を立てていく。
それがまとまりかけたときだった。
「待ってください!」
いきなりだ。
いきなり、ジェシカさんが叫んだんだ。
必死の形相で。
そして……こう言ったんだよ。
「ロリアさん! その階段を上ってはいけません! 死んでしまいます!」
……え?
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