第84話 2階に上がったら
「……良かろう。では階段を上がって2階へ行くがいい」
その後。
場のカードが無くなるまでゲームを続け。
地獄のゲームが終わった。
……結局、こちらの損害は爪1枚で済んだ。
大勝利と言っていいだろう。
流石に爪が剥がれたくらいなら、ジェシカさんの回復魔法で治療が出来るので。
実質損害ゼロと言っていい結果だと思う。
この階の番人・ダンタリオンは何と言うか……
敗北した顔になっていた。
まあ、実際にゲームには敗北したんだけど。
そうじゃなく心から負けた、みたいな。
ジェシカさんが躊躇いなく爪を剥がしたことに気圧されたのか、ダンタリオンはその次のカード捲りで的中できず。
あとはずっとジェシカさんのターン。
ほぼ、圧勝だ。
元々小柄だったけど、もっと小さくなったように見えた。
そして
「まさかここまでやると思わなんだわ」
そんなことを。
ダンタリオンは床に胡坐を掻いて座ったままで言ったんだ。
そんな言葉を発した彼の目は1つ無くなってる。
まあ、前後左右に2個ずつある目の1つが無くなっただけなので、特に不自由は無さそうだったけど。
「もう、ワシの完敗じゃ。上に行って堂々と次の試練を受けるがいい」
そこまで言うと、ガコン、と音がして。
奥の壁が動き出し、響きと共に上り階段がある部屋の入口が出現した。
俺が
「なかなか底意地の悪い試練だったよ。仲間を思いやる気持ちを試す試練なんてな」
そう、階段の部屋に行く直前にそう言葉を残すと。
「……ここなど、まだまだ甘い試練じゃ。上の階の試練はこれ以上よ」
ダンタリオンは皮肉げな笑みを俺たちに向けて来たんだ。
「ありがとう、もういいわ」
ゲームで剥がされた爪を回復させてもらい。
姉さんは自分の親指を確認していた。
爪を剝がされて血を噴いていた親指が、綺麗に治っている。
ジェシカさんの神官系の魔法は良く効くよ。
「セリスさん。完封出来なくて申し訳ありませんでした」
姉さんの爪を治したので、今度は自分の爪を治しながら、ジェシカさん。
すまなさそうに頭を下げて、詫びる。
それに対して姉さんは
「構造上、完封を目指すのは運に左右されるんだし。気にしなくていいわ」
それどころか、むしろ回復可能な負傷でダメージを抑えたあなたの仕事は称賛されるべきよ。
姉さんはジェシカさんを全く責めずに、逆にその仕事の結果を褒めていた。
褒められたジェシカさんは嬉しそうだ。
「お恥ずかしい限りですわ」
そう返す。
そして俺たちは階段を上がり切り。
2階に到達した。
2階は廊下が続いていて。
扉のようなものが見当たらない。
螺旋状の白い廊下……
どんな試練が待っているのか。
そう思い、俺たちは一歩踏み出した。
その瞬間だった。
耳元で誰かに囁かれたんだ。
……こんなことを。
「コノ階ニ最後ニ残ッタヒトリハ……死ヌヨ」
……え?
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