第11話 え? ダメなの?
今日は休息日。
創世の1週間で、6日掛けて神々がその御身を捧げて世界と生物を創造した後。
7日目の最終日は神々が全てお隠れになり、お休みになられたという話を根拠に設定されているもの。
神官であるジェシカさんは、流石にこの日まで働けとは言わないようで。
俺は久々に、本来は旅立って捨てるはずだった自宅で、伸び伸びと朝7時にスッキリ起きることが出来た。
……いつもは5時起きだからねぇ。
寝巻のまま、リビングに向かうと、姉さんがご飯の準備をしてくれている。
今日は休息日なので、いつもの魔術師の正装じゃ無くて、町娘風の茶色のワンピース姿。
俺は
「別に良いのに。姉さんだって疲れているんじゃないの?」
そう言いながらテーブルに着く。
「これは習慣だからね。別に気にしなくて良いわ」
言って、今日は硬いパンとソーセージ。そして野菜炒めが朝食として出されたので。
俺はそれに手を伸ばしながら
「姉さん、ご飯食べて一服したら外に行かない?」
そう言葉を掛ける。
「行くってどこに?」
向かいの席で同じものを食べながら、姉さん。
俺は
「六大神教の教会」
そう答えた……
ジェシカさんのパーティーに採用されて2週間。
2回目の休息日だけどさ……
最初の休息日はずっと寝てた。
その週は手取り200フライア程度のゴブリン退治がたった2件。
なのにゴブリン退治やコボルト退治自体は毎日。
しんどくてねぇ
休みが待ち遠しかった。
そして休みがやって来たとき。
そういうわけで、外に出ていく気がどうしても起きなかった。
そこからの2回目の休息日の今日。
今日は教会に行く気なった。
その理由は。
2回目で慣れて来たのもあったけど。
……ちょっと大きな声では言えないんだけどさ。
「皆さん、今日世界があることに感謝しましょう」
教会前広場では、お坊さんやシスターが通行人に感謝を呼び掛けている。
「マンゼス様、トゥーラ様、ウェンドス様、ターズデス様に感謝しましょう」
マンゼス様は物質を作って大地と海を作った神様。
トゥーラ様は天候を作った神様で。
ウェンドス様は火が燃える、水が凍る、風が吹く、モノが下に落ちるなどの、あらゆるこの世の現象を作った神様。
ターズデス様は、太陽や月、星を作って大空を作った神様。
……ちなみに……魔術師系の魔法は、ウェンドス様とここには出てないけど、モノが起きることにルールをつけて制御可能にした神様・フライア様と精神的に接触して発動させるんだよね。
「そしてフライア様に感謝しましょう。フライア様が身を捧げて下さったから、世界に秩序が生まれたのです」
おっと。
そう言ってたら、フライア様の名前が。
……フライア様が献身する前は、無差別で無秩序に現象が起きてたらしいからね。
あちこちで勝手に火が燃えたり、水がいきなり凍ったり。
モノが落ちるとき、ゆっくりだったり、最初からトップスピードだったり。
そんな感じで。
だから六大神の中で、実質的な世界を創ったマンゼス様と。
全ての生き物を創造したサタノス様と並んで、最も偉大な神様として扱われてる。
……で。
俺が今日、姉さんと一緒にここに来たのは教会の人の休息日の活動を見に来たわけじゃなく。
俺は教会前広場をザっと見回す。
すると、居た。
おにぎりや、パン、野菜スープを配ってる集団が。
……休息日だと、教会で無料で食べ物を配ってくれてるんだよ。
手取り少ないからさぁ……
ちょっとくらい食費を浮かせる努力して、楽したいよねぇ。
「アルフ」
そんなことを考えていたら。
姉さんがちょっと、怒っていた。
……えーと
「……姉さん、何で不機嫌なの?」
原因に心当たりが無いから、そう訊いたんだけど。
姉さんは、明らかに不機嫌な声で。
「まさかとは思うけど、生活困窮者向けの炊き出しに並ぶつもりじゃないでしょうね?」
え? ダメなの?
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