第18話 吟遊詩人ロリア
「ちょうど良かったかもしれませんね」
姉さんのキャンプ提案に、足を止めて荷物を下ろしながらジェシカさん。
ブラックパーティーやってたときはキャンプなんてしたこと無かったな。
休みなしでゴブリンの巣穴やコボルトの巣穴を探して、破壊。
探して、破壊。
探して、破壊。
探して、破壊。
その繰り返しだったから。
……まあ、今思うと。
ジェシカさんのブラックさって、かつて道を踏み外した仲間を告発した過去がそうさせていたのかもしれないよな。
自分は正義を貫くために、縁を結んだはずの仲間を官憲に引き渡した。
そこまで正義を貫いたのだから、これからはこれまで以上に正義を貫かないといけない。
……そう思ったんじゃないか?
今はそう思うんだ。
……そんなことを考えつつ。
俺はご飯のための煮炊き用に、火を起こすために動いた。
俺が料理するなら、本来これは不要なんだけども……
燃料のちっちゃい薪をナイフで削り、着火源にする。
こういうの、男の仕事だと姉さんには言われているのだけど。
実際のところどうなんだろうね?
まぁ、料理は自分がやるのだからと、ロリアがこれも自分がやるって言ったけど。
そこを譲らず、敢えて俺がやってるわけだけど。
火を起こし。
ロリアに調理してもらった肉と、パンと野菜の缶詰の食事を終えて、俺はパーティーメンバーたちに視線を向ける。
皆、
で、なんとなく見てたんだけどさ。
俺の見ている前でジェシカさんが、履いていたブーツを脱いだんだよな。
見事な手際で。
今まで靴を脱いでるジェシカさんを見たこと無くて。
俺は見入った。
ブーツを脱いで素足になったジェシカさん。
俺は彼女の足が綺麗だと思ったんだ。
冒険者だと歩き続けるのが基本なのに。
爪も別に荒れてないし、綺麗な足だった。
まるでお姫様のような足だな。
目にして、そう思い見惚れた。
そのときに。
「勇者様、足フェチすか? ひょっとして」
……耳打ちされ、我に返る。
言ってきたのはロリアで。
……こうして足をガン見しているのがバレたら、ジェシカさんに幻滅されるだろ。
俺はそう思い、慌てて視線を意識的に外した。
そんな俺を
ニチャッ
……ロリアは俺を、例のキモイ笑顔で見て来たんだよね。
ロリア。
この子、マジで何なんだ?
身元は話さないから良く分からんし。
吟遊詩人自称しているけど、吟遊詩人なんて言ったもん勝ちな職業だしなぁ。
俺でも明日からなろうと思えばなれるし。
何の身元の保証にもならん。
でも、悪い人間では無いと思うんだよね。
姉さんも言っていたけど。
……一緒に居ても、悪い奴からなんとなく感じる、腐臭みたいな気配を彼女から感じないんだわ。
言わなかったけど、実は先日のDQN彼氏の彼女さんからはそういう気配を感じたんだよな。かなり強く。
だからなおのこと、あのときジェシカさんを信じられた面もある。
まあ、この子は料理は美味いし。
狩人のスキルで獲物を取って来てくれたりもするし。
バトルには役に立たないかもしれないけど、その他はすごく有能だから、メチャ助かってるわけだけど。
そんなことを。
俺は、彼女を見つつ考えた。
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