第82話 絆破壊ゲーム
「さて、やるかの。誰が来る……?」
床にカードを並べ終え。
ダンタリオンはニカニカ笑って地べたに胡坐を掻いて座り込む。
ええと……
「ひとつ、良いか?」
「なんじゃ?」
俺が遠慮がちに手を上げて質問を希望すると。
あっさり認められた。
俺は
「その札合わせが揃うと、一体何が起きるんだ?」
半ば返答を予想しつつ。
するとダンタリオンは
「札に書いてある災いの内容が、敵陣の誰かに降りかかるのぅ」
……やっぱり。
なんてことない、って言ったふうにゲームルールを説明するダンタリオン。
カードを並べているときも、今そのゲームルールのキモの部分を語るときも。
ダンタリオンは本当に、なんてことないという顔をしていた。
俺は
「それはつまり、こちらがカードを揃えばお前がダメージを負うのか?」
「そうじゃ」
そこに恐れは何もない。
コイツ……
「お前はそれで平気なのか?」
俺の問いに
「ワシなら何も心配いらぬ。例え欠損が起きても、1時間も寝ていれば再生するでな」
にこやかに返して来た。
……なるほど。
こいつにとっては一時的に身体欠損が起きても、ほっとけば後で治るので大した問題では無いのか。
だから何も気にしない。恐れもしない……
コイツは魔物で、そういう理屈で平気というのはあるかもしれない。
だけど
こっちはそうはいかない。
もしかしたら、こっちだってジェシカさんの神官魔法で欠損を治せるかもしれないけど。
それでも舌欠損がジェシカさんに起きたらアウトだし。
それに仮に治せるとしても……
このカードゲームの失敗で、こっちにダメージが降りかかってきた場合。
プレイヤー役をした人間と、ペナルティを被ってしまった人間の間の絆が壊れるかもしれない。
そりゃそうだ。
あとで治すからいいだろと、自分の身体を切り刻むことを「しょうがないな」と許容してくれる人間はあまりいないだろうし。
やむを得ないことだ、と頭で分かっていても、感情がついていかないと思う。
絶対に、恨みが生じる。
よくもミスしたな、という。
「ああちなみに」
そこで。
ダンタリオンは大事なことを言い忘れていた、という具合に付け加えた。
こんな、とんでもない情報を。
「ダメージを負う奴は、ワシと対戦していない奴の誰かじゃ。お前さん方はな」
……決定的!
ミスがそのまま、仲間との絆の破壊に繋がるゲーム。
これはとんでもないゲームだぞ……!
戦慄する俺たちに、ダンタリオンはそこでようやく
「さあ……はじめようか? 誰が挑むんじゃ? ワシは誰の挑戦でも受けるぞい」
非常に底意地の悪い笑みを浮かべて、そう言ったんだよ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます