第81話 ダンタリオンの試練
「魔物がワタクシたちに試練とはご挨拶ですねぇ」
怒りに震えるジェシカさんの言葉。
右手に握った
だけど
「何が試練だ! ぶち殺してくれるわああああああ!!」
目を吊り上げて、激昂。
そのまま飛び掛かりそうになるけど
「……この部屋では暴力禁止じゃ。やってみろ……死ぬのはオヌシじゃぞ?」
ダンタリオンの言葉。
その言葉には……なんだか説得力があったんだ。
ジェシカさんはその辺を嗅ぎ取ったのか。
疑わず、戦棍を納めた。
「ホッホッホ。賢明な判断じゃ。その戦棍でワシを殴れば、そのままお前に跳ね返るでな」
愉しそうに笑う魔物の老人。
「……魔物め……創世の1週間で生まれなかった異形が!」
ジェシカさんが吐き捨てるように言い、悔しがっている。
思う存分暴力を振るえないのがよっぽど悔しいみたいだ。
ダンタリオンは涼しい顔でジェシカさんの怨嗟を聞き流している。
そして
「お前さんは何でそこまで魔物を憎むのじゃ?」
「そんなこと、決まっているでしょう!」
ダンタリオンの素朴な疑問と言った問いに、ジェシカさんは分かり切ったことを訊くなと吠える。
「お前たちは六大神が生み出した生き物では無い! それだけでなく、人間を目の敵にして殺戮し、種族によっては人間の進歩を阻もうとすらする!」
ジェシカさんの言葉は深い憎しみが籠っている。
「お前たちは存在自体が人間の敵であり、見つけ次第殺し尽くさなければならない存在だッ!」
……多分ジェシカさんのことだから、その実例は? って訊いたら……
いっぱい、2時間3時間かかるくらいしゃべり続けるんだろうな。
その辺の理論武装はキチンとしている人だし。
そんなジェシカさんの言葉を聞いたダンタリオンは
「うむ。魔物は確かにそういうことを是としている」
頷き、認め。
こう言ったんだ。
「……しかし、敵が居た方が人間同士団結が出来るんじゃないかとか」
何だが皮肉げな笑みを浮かべて。
「お前さんたちが進歩と思ったことが実は呪いになる可能性を考えたりはせんのじゃな」
そう、呟くように。
……俺にはダンタリオンの言ってることがちょっと理解できなかった。
そして俺がその真意を問おうとしたとき
「お待ちかね。試練の内容を教えてやるぞい」
ダンタリオンはさっさと話を先に進めてしまい。
聞きそびれてしまう。
ダンタリオンは
「札合わせをしてもらうぞ。このワシと」
札合わせ……?
カード遊びの一種だよな?
姉さんが得意だったゲームだ。
ルールは単純。
カード52枚を伏せて並べて。
順番で2枚ずつ捲っていき、同じ数字のカード2枚が揃えば点数になる。
そういうゲーム。
子供でも出来る単純なルールのゲームだけど。
頭の性能がモロに出るゲーム。
俺も小さいときによくやったけど。
姉さんに勝てた記憶が一切無いんだ。
……それをやれと?
「それに勝てば通してくれるというのですが?」
ジェシカさんの問い。
暴力を諦めたからか、比較的穏やかに。
ダンタリオンは
「いや」
首を左右に振り
「最後までやってくれればそれでよいぞい」
……そんなことを言ったんだ。
え?
それでいいの? と思ったが
続いてダンタリオンが見せたカードの内容を見た瞬間。
マジかよ、と思ったよ。
通常のカード……剣、盃、金貨、稲穂の4種に、それぞれに数字が1~13まで振られてて。
4×13=計52枚の通常カード構成と違ったんだよ。
手指欠損、足指欠損、爪欠損、舌欠損、性器欠損、右乳首欠損、左乳首欠損、目玉欠損、耳欠損……
そんなことが書かれているカードだったんだ。
これから何をさせられるのか。
それがなんとなく、予想できてしまった……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます