第111話 勅令の真実
「僕が何をしたいか?」
セリスの言葉を聞き。
サンヴィリア様はなんだか……
冷めた目をしていた。
……人外の、神のオーラを感じた。
そして言ったよ。
「最初に言っただろ? 僕を倒せって」
言ってたな。
ロリアを取り返したければ自分を倒せってさ。
でも、そうじゃないんだ。
「それは何故ですか?」
セリスは怯まない。
問い返す。
そう……
何で倒して欲しいのか。
そこなんだ。
そこが分からない。
教えてもらいたいんだ。
サンヴィリア様は……
「魔王を倒すために立ち上がり、それに対して全く権力者の援助を受けずに、仲間を集めて力を合わせ、目的を果たす勇者……」
そう、少し謳うように言った。
まるで詩人が謳うみたいに。
「……そんな人物が実在したら、誰もが尊敬するだろうね? そんな人間はきっと人間の理想像になり、皆がそれを目指す……違うかい……?」
サンヴィリア様はそういう人物が居たら
「気持ち悪い」
「頭が変だ」
「おかしい」
「異常者」
って罵る人間が居ないと思っているのか。
……思っているんだろうな。
そんな無償の奉仕精神に溢れた、立派な人間はまず居ないのに。
そしてそういう人間は叩かれるんだ……。
でもさ……
そういう人間が実在した場合に、素直に称賛できない人間って、一体何なんだろうな?
本来はそっちの方が良いはずだろ。
俺はそう思い、黙っていた。
違うと思う、って言いたいけど。
言うのは違う気がしたから。
何も言えなかった。
代わりに
「……サンヴィリア様はその倒される魔王役になりたかったのですか?」
セリスが確認してくれた。
サンヴィリア様は
「そうだよ? ……もう、そろそろ良いだろ? 戦おうか」
やれやれやっと終わったか。
そんな表情を浮かべてサンヴィリア様は腕を広げて
ふわり、と浮き上がり……
俺は
「国王陛下が下賜されたのが、安物の剣と小遣い銭だったのもそのせいですか!?」
そこで思わず口に出していた。
それに対し、サンヴィリア様は少し驚いて俺に目を向けてきた。
「……そこ、大事? 当たり前だろ?」
何をくだらないことを言うんだ。
そう言いたげな目。
「そもそもアトペント王国自体、大陸の覇者として最も相応しい男がその王だったから、僕が助力して成立させたんだし」
え……?
衝撃の事実。
そうだったのか……!
俺がその事実に言葉を発せないほどの衝撃を受ける中
「だから国王に言った。勇者アルティアの息子が16才になったら小銭と安物の剣を与えて、助力無しで期限を切らない魔王討伐の使命を下せってね」
いちいち説明させるな面倒くさい。
俺はサンヴィリア様にうざったそうに、そう教えられたんだ。
「国王に命令されないと注目されないし、かといって支援があったら国王のお陰と言われる! だから言った! これで良いかい!?」
サンヴィリア様は……本当にイライラしているようだった。
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