第49話 分かった

「……その後、褒められたことでは無いが、天候を自在に操れて、当家の領土が農業でほぼ無敵であることが手放せなくてな……」


 色々悩んだ末、隠匿することに決めた。

 もし国王陛下に知られることになったら、神器と気づかなかったと言い逃れる準備を整えた上で。


 ……そんなリリィさんの話に、貴族様は貴族様で大変なんだと思うしか無かったよ。

 領民の生活を楽にして、豊かにして、税収を上げていく責任があるんだな……。


「なので、結婚だ」


 リリィさんは真顔を言う。

 そこには少しだけ躊躇ちゅうちょを感じたけど、恥じらいや辛さみたいなものは見えなかった。


 ……んー。


 こういうことを言うのはどうかと思わないでも無いけど。

 少し、敬意を持ってしまう。


 貴族だろうが平民だろうが、結婚は重大イベントのはずなのに。

 この人はそのことを、家の都合で決めることに疑問を持ってない。


 ……いよいよとなったら、覚悟を決められる人なのか。

 貴族としてはワガママを言ってきた人ではあるけど……


 なんというか、気高さを感じた。


 なので俺は


「……あの、ちょっと良いですか?」


 そっと手を上げて、提案する。

 リリィさんは何を言うんだろうと、探るような目を向けてくる。


 俺は


「……見合いというか、互いの人とナリを知るために俺たちの旅に同行しませんか?」


 そんな解決策を提示した。




「見合い……同行……?」


 リリィさんはちょっと困惑している。

 俺は頷いて


「それでリリィさんが神器をこっそり携帯して来て貰えれば、借りてるのと同じ状態になりますし。そうすれば、無理に結婚しなくても目的は達成できるし」


 手をバタバタ振って、伝わるように、誤解が無いように俺は必死で言葉を選んだ。


 結婚なんて御免だ、って思われるとさすがに失礼で、リリィさんの家の面子メンツを潰すからね。


「リリィさんは結婚をなるべく避けたいんですよね? だから婚約者を」


「……ん、まぁそうだな」


 返答がワンテンポ遅れたけど、俺の言葉を肯定する。


 うん、だったら


「この方法だと、公爵家に後の禍根を残すことも避けられて、強制結婚も避けられますよ」


 ……これでどうかな?


 リリィさんの反応を待つ。

 リリィさんは……


「……ええと、アルフレッド殿は」


 そしてしばらく沈黙した後。

 リリィさんは口を開いて


 こんなことを言ったんだ。


「私との結婚は……躊躇があるのか?」


 んーと……


 返答に困る質問だなぁ。

 あります、なんてハッキリは言えないな。

 俺は少し考えて


「別に無いですけど、貴族の結婚は重要なカードだと教えられてきたので」


 そう返し。


「それに、家宝を借りることを目当てに結婚することには違和感ありますし」


 ……そこは正直そう思うので、本心を答えた。


 リリィさんを女性として別に欲しいと思わず、家宝を借りるついでに結婚するって……

 ああ、勝手に家宝であるって決めたけど、多分間違って無いよね。


 神器なんだし。宝で無いはずがない。


 俺がそんな感じで、思うところを誤解が生まれないように注意して伝えると


 リリィさんは


「分かった」


 そう、一言言って。

 頷き


「同行しよう」


 ……同行を了承してくれたんだ!

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