第50話 本物の神器

 そして。


 その日はお屋敷に泊めて貰えた。


 食事代が浮いたのと、公爵家の立派なお風呂、寝床を提供して貰えて。

 非常に助かったし、嬉しかった。


 食事のときはマナー違反にならないかどうかで焦りまくり、あまり味が分からなかったけどな。


 ……その辺。

 姉さんとジェシカさんが普通に出来てるのは何か納得は出来たんだけど。

 ロリアまでソツなくこなしているのには何故か納得いかなかったよ。


 何で全く音を立てないでスープ飲めてるのよ。

 アンタ。


 ホント良く分かんないなこの人。




 そして次の日。


「よろしく頼む」


 俺たちの応対をした部屋……応接室で。

 リリィさんと向き合った。


 俺たちと女騎士リリスとして出会ったときの格好……

 白銀の鎧に、ハルバードという武装をしているリリィさんと。


 多分、父親である公爵様と話をしたんだろうな。

 で、正式に許可が出たか。準備完了っぽい。


 一応、言っておく。


「リリィさん……いや、リリスさんの方が良いですか?」


「リリスで」


 俺の問いに、そう来たので頷いて


「分かりました。リリスさんで……あなたは大事な貴族の跡取りですから、危なくなったら生存を優先してください。鏡を貸して下さるだけで助かってますから」


 これだけは言っておかないとな。

 大貴族様の家を巻き込むわけにもいかないし。


 上手く三種の神器が揃ったとして。

 魔王の島に渡れたら、そこで帰れるなら帰って貰おう。


 俺はそう考えていた。

 しかし


「それは困る……ノウリーンの領主の家の者として、恥になるような真似は出来ん」


 んん……?


 俺が困惑していると


(貴族は責任が伴うのよ。血を残すのも無論重大な使命だけどね。……仲間を置いて逃げたなんて、恥以外の何物でも無いわ。家名に傷がつく)


 そう、姉さんに耳打ちされる。

 うおお


 ちょっとそれは、責任重大だな……!

 これからは無茶が出来ないってことじゃないか。

 これまで以上に。


 ホント、気を付けなきゃな……。

 そんなことを噛み締めていると


 そこに


「すみませんリリス様、鏡を見せていただいてよろしいですか?」


 ジェシカさんがそのことを切り出す。


 あ、確かにそれは大事だな。


「見せていただけますか?」


 お願いした。

 するとリリスさんは頷き。


 道具袋から、白い絹の布で包まれたものを取り出して。


 その布を、開いてくれた。


 ……そこには


 金属鏡があった。

 色は銀色。


 鏡の部分は鮮明に俺の顔を映していた。

 リリスさんに許可を取って触らせてもらうと、裏側には太陽と雲、雷をイメージさせる絵柄が刻まれていた。


 ああ……天候を操れるっていう、神器に相応しい意匠じゃん。


 何だか感動してしまった。


 そのとき


(え……?)


 俺の脳裏に、残りの神器の「剣」と「指輪」の位置がなんとなく浮かび上がったんだ。

 その……方角と距離というか。

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