第6章 天空神剣ターズデスカリバー

第51話 鏡の導き

「なんか、神器を触ると……他の神器の位置が分かるんですが」


 俺がそう伝えると、リリィさん改め、リリスさんが驚く。


「そんなことが出来るのか!?」


 えっ、これって特別なことなの?

 ……って。


 もしこれが特別なことでないのであれば、これまでに公爵家が他の神器獲得に動かなかったのに説明がつかないしな。

 そこから考えると、これは必然、なのかもしれない。


「さすがは勇者様ですね」


 ジェシカさんが褒めてくれたのが少しこそばゆい気がした。




「これこそがぁ、勇者の資格、なんですかねェ」


 ロリアは嬉しそうだ。

 多分良いネタを拾ったと思ってるんだろう。


 ……って


「ロリア、公爵家が鏡を持っていたことは秘密だぞ。魔王の島に渡るためには三種の神器のうち、剣と指輪だけあればいいって話で頼む」


 釘刺しておかないと。

 ロリアは「無論ですよぉ」と納得してくれた。

 少しホッとする。

 協力してくれたのに、リリスさんの家を窮地に陥らせるわけにはいかないしね。


「では勇者様、次の目標は」


 ジェシカさんの期待が籠った目。

 俺は頷いて


「神器の導きに従って、まず剣を手に入れよう」


 剣……天空神剣ターズデスカリバーを。

 絶対に壊れない不滅の剣……普通に欲しいよ。




 そうして。

 リリスさんに鏡を触らせて貰いながら旅を続けた。


 定期的に剣の気配を探りながら徒歩で進んでいくんだ。


 そんな方法で大丈夫なのだろうかと最初は思っていたけど。

 意外になんとかなった。


 だけど……

 何日も旅をした果てに、その場所に辿り着いたら


「勇者様」


 ジェシカさんの戸惑いの声。


 さっきからしきりに周囲を見回している。

 なーんもない、岩と土だけの荒れた土地を。

 そしてこう、呟くように言う。


「本当にここなんでしょうか? 何も、それらしいものが見えませんが?」


 そう。

 ここには何にもなかった。

 荒野だったんだ。


 ……鏡の教える剣の位置は、間違いなくここなのに。


「私には感じ取れないから何も言えないが……どこにあるんだろうな? ……地中だとか?」


 リリスさんも鏡を俺に触らせながら、彼女なりの予想を口にした。

 それに対して俺は首を左右に振った。


「地中からは何の気配も感じないんです。ここにあるはずで……どこにあるかが分からない」


 手の届く範囲に剣がある。

 その気配を鏡を触りながら探知すると感じるのに。


 それがどこなのか特定できないんだよ。


 ……どうしよう?


 そう、俺が手詰まり感を感じていると。

 さっきからジッと思案していた姉さんが


「……ここから一番近い町は、クルスの町だったわね」


 口を開き、俺たちに提案してくれたんだ。


「クルスの町に行って、この場所の情報を探りましょう」


 ……このことに対する対処法を。

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