第106話 急がないと!
ロリアが攫われた!
血の気が引く。
これまでも危ないことはあったけど、こんなのははじめてだ!
「ロリアさんは魔王の城に連れていかれましたわ!」
ジェシカさんも慌てていた。
リリスさんも青褪めて目が泳いでいる。
そしてセリスはじっと魔王の城を見つめていた。
俺は
「すぐ助けに行こう!」
大声でそう呼びかける。
俺には神器の剣と指輪がある。
……ブラックドラゴン相手でも、勝ち目があるはず!
やってやるよ!
時間を置けば置くほどロリアが危なくなるから!
「勿論ですわ!」
「ああ、当たり前だ!」
ジェシカさんとリリスさんは俺に賛成してくれた。
そして3人で突撃しようとしたけど
そこで
「待ちなさい」
……セリスが待ったを掛けたんだ。
「姉さん! 作戦を立てるために1度引こうなんて言わないよね!?」
少し興奮していて。
俺はセリスに喰って掛かるように言う。
セリスは首を振る。
「そんなわけないでしょ。完全無策で突っ込むなと言ってるの」
俺の剣幕にも怯むことなく、彼女は
「リリスさん」
リリスさんに目を向けて
「トゥーラミラーって祈りの効果はどのくらいで出るの?」
鏡の神器の効果を確認したんだ。
するとリリスさんは
「ほぼすぐに出る」
「効果範囲の調整はできるの?」
「言語化できるなら」
質問しまくる。トゥーラミラーについて。
……セリスは何をしようとしているのか?
リリスさんが荷物から、トゥーラミラーを取り出して、近場の岩に安置する。
そこにセリスが言われた通りの作法に従い、手を合わせて
「天候の神トゥーラよ。この魔王の島の城の上に、黒き雷雲を呼び寄せ給え」
……そんな、祈りの言葉を捧げたんだ。
すると、ほぼ同時だった、
魔王城の上空に、黒い雷雲が渦巻き、形成され。
ゴロゴロという稲光、雷鳴。
「皆、頭を下げて伏せなさい!」
セリスは帽子を押さえて伏せる。
俺たちもそれに倣い、魔王城の様子を見守った。
……ここからじゃ良く分からないけど、なんとなく混乱しているみたいに思えた。
そして
ピシャアアアアアン!
という音と共に、一筋の光が天から降り注ぎ
グオオオオオオオオッ!
凄まじい悲鳴が轟いた。
……魔法の雷と、天然の落雷。
威力は文句なしで天然物の方が強かったりするんだよな。
魔法の雷で打たれて、生き残るヤツはそれなりに居るんだけど。
天然の雷……天雷では約8割死ぬ。
手当しないなら9割だ。
まぁ、そりゃそうだろうな。
魔法の雷は術者の実力に左右されるもの。
天然はそうじゃない……
そしておそらく、人の扱えるもんじゃないんだ。
今の落雷で、おそらくブラックドラゴンが打たれた。
……急ごうか。
俺は立ちあがり、急いで岩に安置されているトゥーラミラーに雷雲の除去を祈った。
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