第105話 予想外の状況
魔王の島に入って。
最初に思ったのは……
何も居ないということで。
最初はさ、デモンドみたいな魔物の巣窟を想像してたんだ。
だって魔王の居城がある島だよ?
当然そう思うじゃん?
……なのに
ジェシカさんが
「我の目を 遠く見通す 千里の目」
祝詞をあげて自分の視力を上昇させ。
観察。
そして一言。
「何も見えませんわ」
そう。
木や湖のようなものが一切ない。
見通しは良いけど、そのせいで手に取るように分かる。
……何もいないな。
魔物も含めて。
そのことが。
「魔王の城も見えますね」
ジェシカさんの言う通り。
魔法無しの素の眼でも視認は出来るかな。
遠くにお城が見えて……
まぁ、変な城だけどな。
明らかに人工物なんだけど、窓無いし。
お椀みたいで……
「……城の門番にドラゴンが居ますね」
えっ
「ドラゴン!? ドラゴンがいるんですか!?」
ドラゴン……
地上に出る魔物で、最強格に数えられる魔物じゃないか!
個体の年齢によって体色は赤や青、緑や黒になるんだけど。
姿は共通で。
全体的なフォルムは巨大なトカゲ。
ただし、角が頭に2本生えていて。
口から火炎のブレスを吐く。
……大した能力は持って無いように見えるけど。
逆に言えば、能力の多彩さが無くても十分な脅威である相手だってことだ。
ドラゴンの体色は
1番若い個体が緑。
1回脱皮して青。次に赤。
そして最後が黒。
年齢を重ね、脱皮するほどにドラゴンの知性が高くなり、鱗が固くなり。
当然力も強くなって
魔物としての強さも上がっていく……らしい。
「ドラゴンは何色ですか?」
だから訊ねた。
ジェシカさんに。
すると緊張した声音で
「……黒です」
うはっ。
ジェシカさんの言葉には、流石に重いものがあったよ。
よりにもよって、最強種のブラックドラゴンかよ……!
「ブラックドラゴンを倒さないと魔王の城に入れないのね」
セリスはそう思案しながら呟いて
「ドラゴンスレイヤーの称号は欲しいが……軽々しく挑むには強すぎる相手だ」
リリスさんも思案顔。
怖気づいているわけじゃないけど、勇気と無謀は違うもんな。
そりゃこうもなるさ
でも……
「周辺は見通しが良いので、不意打ちは難しそうだと考えますわ」
ブラックドラゴンの状況を観察しながら、彼女。
結構、いやかなり厳しいな……
こっちには剣と指輪という強力な武器とアイテムがあるけど……
それを頼みに突っ込むのは無謀では無いとは言い切れないと言うか……
そんな風に、皆でウンウン悩んでいたときだった。
「わっ」
いきなりだ。
ロリアが大きな声を出したんだ。
俺たちは何事と思って視線を向ける。
そして絶句した。
……ロリアが宙に浮いていた。
触手に絡めとられて。
触手の主は……アノマロカリス。
体長2メートル近い大きさの、空飛ぶダンゴムシ……いやムカデ?
いやエビ……いやシャコか。
まぁ、蟲系の魔物だ。
特徴は、身体の側面にビラビラ生えている羽根で空を飛ぶ能力があることと。
複眼つきの顔の前にある2本の触手で、地上の生き物を捕えて餌食にするところだ。
ロリアはその触手に捕まっていたんだ。
こんなのが、どこに隠れていたんだ……?
……いや
助けないと!
俺は飛び出すが、一瞬遅かった。
アノマロカリスは浮かび上がり、ロリアを連れて飛び去って行く。
かなりのスピードで。
……魔王城に。
「あああああああ!」
……ロリアの悲鳴を、その場に残して。
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