第4話 国王陛下との謁見の末

 謁見に臨む前。

 お城のお役人に色々指示されて、本番では言われた通りに振舞った。

 お役人が言うには、陛下の許可が無い限り動かないように、ってことなんだけど……


 本当にこれでいいのかな?


 謁見の間に言われるままに進み出て。

 姉さんと一緒に指示通りに控えた。


 謁見の間は輝くような美しさだ。

 さすがは大陸の覇者の帝王たる国王陛下との謁見をする場所。


 真っ赤な絨毯の上で膝を折って、陛下のお言葉を待った。


 とてもまともに視線を向けられないけど、俺たちの前の一段高いところに玉座があって。

 そこに陛下がいらっしゃる。


 そうして俺がそこで、事前の指示通りに控えていると。

 かなりの年月を経た男性の声が降って来た。


「……勇者アルティアの子・アルフレッドよ。此度は朕の求めに応じ、ご苦労であった」


 おお……なんかすごい威厳だ。

 流石は王様だよ。

 高貴なオーラをビンビン感じる。


 ちょっと興奮し過ぎて、手足が震えて来た。

 俺は今、すごい舞台に呼ばれてる……!


 チン、チン


 すると、この謁見の間のどこかから、金属の音がした。

 トライアングルの音だと思う。


 ハッとする。


 ……事前指示の中に、発言を促す意味で鳴らすって指示があった。

 発言して良いタイミングが、不慣れな俺たちには分からないだろう、ってことで。


 だから


「お言葉、身に余る光栄でございます」


 俺は、事前に教えられた模範返答を陛下にお返しした。


 陛下が頷く気配があった気がした。


 そこから陛下は何か仰ったけど、正直細部はよく覚えてない。

 魔王がいかに脅威か、そんなお話を仰ったような気がする。


 ……多分、この国の成立前の話だと思うんだけどな。そういうの。

 つまり大昔。


 なんか、取って付けたような気がしたけど、そう思った瞬間、それは不敬じゃ無いのかと思い直し、考え直した。


 そしたらお話の中でこんなお言葉があった。


「知っての通り、魔物の創造主は魔王。討ち果たせば我々を脅かす魔物たちは消え去るであろう」


 これに関しても正直、メッチャ不敬だとは思ったんだけどさ。

 思わず思ってしまった。


 ……それな。

 誰かがそんなことを言ってるの聞いたことはあるけどさ。


 正直、眉唾だと思う。

 創り手が死んだら、創造物が必ず無くなると言うなら、俺たち人間が消えていないのはおかしいし。


 だって事実居ねえじゃん。

 神様方。

 この世界に溶けて消えたんだから。


 だから全く根拠無いよな。

 そうは思ったけど……


 陛下のお言葉を遮るわけにもいかないしさ。

 黙って聞く。

 すると


「若き勇者よ。魔王を討伐せよ。いくら時間トキが掛かろうと構わぬ。……良いな?」


 とうとう来た。

 陛下の命令……勅令ちょくれいだ。


 そんなの、答えは決まってる。


「仰せのままに」


 ……これ以外無いよ。

 そうしないとこの国では生きていけないから。


 しかし……


 予想はしてたけど、期限は無いんだな。

 言っちゃなんだが、修行の一環のような感じで取り組んでも怒られ無さそう……


 だって、期限という強制力がないわけだし。


 そんな不謹慎なことを頭の片隅で考えていたら


「ならば、勇者に支度品を下賜せよ」


 ……来た!


 いやらしい話だけど、陛下は俺たちに何か下賜してくださると思っていたから。

 勅令だけ出して、後は知らん。

 そりゃあ無いだろうと。


 だから正直、期待してたんだ。


 一体、何を下賜してくださるんだろうか……?


 ちょっとドキドキしていた。


 そして家臣団の手で、恭しく台に乗せられて運ばれてきたものを目にしたとき。

 俺は、自分の目を疑った。

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