第5章 天候神鏡トゥーラミラー

第36話 三種の神器

「三種の神器ってどこにあるんですか?」


 俺はジェシカさんに訊ねた。


 六大神教の人なら知ってるんじゃないのかなと思ったから。


 だけど


 ジェシカさん、申し訳なさそうな顔で首を左右に振る。


「三種の神器はこの大陸が10以上の国に分かれていた時代には所在がハッキリしていたんですけど、大陸が統一される過程で所在が不明になったんです」


 不滅の存在ですから、失われたはずは無いのですが。


 そう、教えてくれる。


 そうなのか……


 でも、だったら


「ちなみにどういう経緯で所在不明になったのか分かってるんでしょうか?」


 俺は訊ねた。

 正確な場所が分からないとしても、可能な限り手がかりは欲しいよ。


 するとジェシカさんは教えてくれた。

 複雑な表情で


「天空神剣ターズデスカリバーは」


 最後に保持していた国の宝物庫に賊が侵入。

 盗賊に盗み出されて、その後の行方が分からない。


「天候神鏡トゥーラミラーは」


 最後に保持していた国が、別の国との戦争に負けて滅ぼされるときに。

 その最後の王が、戦場になっていた海の上で


 神器は絶対に渡さぬ。朕と共に消えるのみ。


 と言って、海に諸共に身投げして海の底へ。

 以後、所在不明。


「自在の指輪ウェンドスリングは」


 最後に保持していた国が、突如魔物の大群に襲われて。

 国王から国民に至るまで殺し尽くされた後。


 その後の所在が分からない。




 ……最後のは兎も角。


 他2つ、何してんの?


 特に鏡!


 滅ぼされた腹いせで、海に道連れにして失わせたってクソもいいところだろうが!

 戦争に負けて国が滅ぼされて辛いのは分かるけど、それで神々の時代から受け継がれてきた神器を、海の藻屑にしていい理由にはならんだろ!


 人類の宝だぞ!?


 クソ過ぎるな。

 猛省して貰わないと。


「鏡のケースは最悪ですね。神器を私物化するなんて」


 なので思わずそう溢した。


 すると


「ええ。そのせいでその国……フラド帝国の生き残った民は以後100年の間、愚王のしでかした蛮行の責任を取らされたそうですよ」


 ジェシカさん、とても優しい笑顔で。


 男性は男児に至るまで徹底的に殺し尽くされ、女性は女児に至るまで奴隷に売られたそうです。

 まあ、魔物と同等の振る舞いをしてしまった悪鬼の王を頂いたわけですし。

 しょうがないですよね。


 ……そうなんだ。


 うん。

 この人、常態の人格は真面目で優しくて働き者で献身的だけど。

 狂信者要素が関わるとマジ怖えな。


 そんなことを頭の片隅で思う。


 そこで


「……じゃあ、どうやって探そうかしら」


 姉さんがジェシカさんの言葉をまるで気にせず、話を先に進める。

 ……うん、今はそっちだよね。

 細かいところはどうでもいいや。


 どうやって探そう?

 神器が無いと魔王の島に行けないわけだし。


 ……しかし

 今の話で、手がかりあるのかなぁ……?


「あのぅ」


 すると


 ロリアがおずおずと手を上げてきた。


 ……おや?

 ロリアは知識量がすごい。

 それはまあ、今までのことで認めざるを得なかった。


 だから


「知っているのかロリア!?」


 思わずそう言ったら。


 ロリアは首を左右に振り。

 こう言ったんだ。


「……神器の所在は知りませんがァ、ここ数十年ん、1回も日照りも長雨も嵐も起きずにィ、飢饉や災害が起きたことが無い土地なら知ってますゥ」

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