第114話 明らかになる真実

 そういえばサンヴィリア様は


「サウラスに口止めをしておくべきだったよ。迂闊だった」


 と、言ったんだ。


 俺たちがサンヴィリア様が魔王であることを見抜いたとき。


 ……何で?


 いや、確かにその通りなんだよ。

 俺たちがその根拠になる話を聞いたのは魔将サウラスからだ。


 でも……


 何でそれを知ってるの?


 神様だから心を読んだ?

 いや


 それ、無理だろ?

 そもそも、俺たちが自説の根拠を問われたから、それを答える羽目になったんだ。


 ……ということは、神様もヒトの心は読めないんだ。


 なのに、正解を特定した。


 ……ありえなくないか?


 サウラスに口止めしていなかった以外、他に話が洩れる要素が無かったから?

 そんなわけないだろ。


 ……ジェシカさんは言ってたじゃないか。


 あの、魔物に滅ぼされた国と俺たちの祖国の間に、神殿間の交流が無かったって。


 ジェシカさんもそういうのを不自然に思ってた。

 だからあっさり、あのときサウラスの言葉を信じたんだ。


 じゃあ、話の出所が他になる可能性だって十分にあるじゃん。



 ……これは何を意味するのか?



 それは……

 あのとき、サンヴィリア様も傍にいたのではないかということ。

 つまり……



「……ロリアはあなたが変身した姿だったんですか?」


 俺の言葉に、サンヴィリア様の顔が強張る。

 それで確信した。


 そうなのか。


 ……いや、話はそれだけじゃない。


 サンヴィリア様は六大神教の開祖だ。

 人間シクスに化身してそれを行った。


 そして今、ロリアもそうだったと分かってしまった。


 ロリアは一体何をしてくれた……?


 それは……魔王討伐の旅の道標。

 水棲の魔女の存在を教え、三種の神器の最初の1つの場所を教えてくれたこと。


 この冒険の旅の、最も大切な仕事をしてくれたんだ。


 そしてこの俺たちの旅で、もう1人大切な仕事をしてくれた人がいるだろ……?


 それは……母さんだ。


 母さんが居ないと、俺が生まれてない。

 そして母さんも不自然なことがあり……ロリア同様、魔王……つまりサンヴィリア様に囚われている……いや、そういう話だった。


 母さんの存在で不自然なのは、誰にも目撃されないでいきなり行方不明になったことと。

 あとは魔王城に来てみてはじめて分かることだけど……明らかにおかしいことが起きたと主張したことだ。


 この城に、バカ男が1人で侵入して、魔王の怒りを買ったという……そんなあり得ないことが起きたなんてことを。

 断言する! 絶対できない! ブラックドラゴンが番をしてたんだぞ!?


 だから俺は続いて


「そして母さんもそうだったんでしょう!?」


 そしてそんな俺の問いに、サンヴィリア様の返答は無かった。


 ……俺の中で何かが弾けた気がした。

 親父は母さんに惚れ抜いていた。

 その母さんがサンヴィリア様の化身だった。


 ……親父はサンヴィリア様に騙されていたのか……?


 そしてその惚れた弱みで神器の剣を取りに行けなんて無理難題を言われて……


 俺は


「アンタは! 俺の親父を誘惑して玩具にしたのか!?」


 ……気が付いたら。

 俺は神様を相手にそんな言葉を大声で発していたんだ。

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