第13話 俺とセリス姉さんの関係

「アルフ、お礼は言っておくわ。ありがとう」


「姉さん、別にフツーのことじゃん。いいよいいよ」


 軽く頭を下げてくるセリス姉さんに、俺は手をプラプラ振って応える。

 そんなん要らんから。


 家族に嫌なことが降りかかりそうなのに、普通は指をくわえて見て無いでしょ。

 助けようとするのは当然のこと。


 姉さんは姉さんで魔法使いではあるけどさ、街中で魔法なんてあり得んし。

 んなことしたら逮捕だから、そんなもん脅しに使えない。


 女性は女性というだけで、こういうときは守らないと。


 俺はそんなことを思いながら、パン配りに戻ろうとした。

 そこにだ


「素晴らしいですわ!」


 ……なんか、ジェシカさんに刺さったみたいで。

 俺の今さっきの行為が。


 興奮した調子で続ける。


「ご姉弟、本当に仲がよろしいんですね! 流石血の繋がりは……」


 ……ああ、そういや伝えてなかった。

 別に話すことでも無いから言わなかったんだけどさ


「ああ、セリス姉さんは俺の死んだ母親の養女なんです。だから血の繋がりは無いんですよ」


 俺の母親は独身時代に姉さんをどこかで引き取って育ててて。

 そのまま俺の父親と結婚。


 んで、俺を産んですぐ死んだらしい。

 それ以上は知らない。


 どこに葬られているのかも知らない。

 姉さん、教えてくれないんだよな。

 知ってると思うんだけど。


 ……まあ、別に知りたいとも思わないけどさ。

 顔も知らないわけだし。


 ずっと俺の傍にいたのは顔も知らない実母じゃ無くて、姉さんなんだよ。


 俺のそんな気持ち。

 どのくらい分かって貰えたか分からないんだけど


 何気なく、俺はジェシカさんの表情を確認した。


 するとだ。

 ジェシカさんが頭を下げて来た。


「……すみません。お辛いことを……」


 んん?


「えっと、何が?」


 良く分からないのでそう返すと

 ジェシカさん、申し訳なさそうに


「小さいときに母上と」


「ああ」


 そっちか。


「ガキのときの話で、別に気にして無いですよ」


 ……んん、ジェシカさんはあれかな。

 まだお母さん生きてるのかな?

 ここを気にしているってことは?




 そして炊き出しを配り終えて。

 密かな目的だったタダメシ1食を確保。


 こんなの別になくても良いのに、みたいな顔をして食べさせてもらった。


 ああー、これが目的で手伝いをしたわけじゃ無いんだけどな―(棒)


「ご苦労様でした」


「いえいえ」


 俺たちは頭を下げ合う。

 教会の人が周囲でまだ働いてる。


 ご飯食べたから、ハイさよならは明日以降の仕事に支障出るよね……

 メッチャ感じ悪いし。


 なのでまあ、流れでそっちも手伝うかあ。

 そういう気持ちになっていた。


 姉さんも同じみたいで


 動き出そうとしていた。


 俺も片づけを手伝おうと思ったんだ。


 だけど……


「危ないッ!!」


 とっさに俺は、ジェシカさんを突き飛ばした。

 石畳の路上に倒れるジェシカさん。


 そして一瞬後。

 さっきまでジェシカさんの立っていた空間を。


 ……数本の矢が貫いていった。

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