雉撃ち。



 割りとマジで発する、レベル8の威圧。殺気や怒気と言い換えても良い。


 とにかく「テメェざけんなよぶっ飛ばすぞオラァっ!」て気持ちを真心込めて伝えてみた。


 会場騒然。


 ちょっと圧が強過ぎたみたいで、実はクソガキだけじゃなくて『TUKIOツキオ』の皆さんや『荒らし』のフルメンバー。残念ながら『SMAPOスマッポ』は一人しか居なかったけど、チラホラと有名どころがいらっしゃるんだよね。


 だからワンフロア貸し切られてる訳でして。


 で、そんな集まりで蒼乃フラムわたしがガチ威圧。その威圧を受けたクソガキハッピーセットは失禁。おいおい大は止めろ大は、シャレにならんだろ。


 ◇


 しばらくお待ち下さい。


 ◇


 とりあえずクソガキハッピーセットには退場して頂いて、お掃除も終わり、仕切り直しと行きたいところだけども、まずは河岸かしを変える。


 クソガキハッピーセットが糞尿を撒き散らした場所で食事とかしたくないし、ナイスミドルなTUKIOやSMAPO、荒らしの皆さんにもそんな場所で食べて欲しくない。なんかいつも薔薇の匂いとかしてて欲しい方々だし。


 というか、私達が楽しくお喋りしてる時に、クソガキハッピーセットのお漏らしが頭にチラつく会場だとシラける。なんか嫌だ。


 なので、会場ごと変えまして、次は超お高い和食に連れてってもらった。わーい!


 予約無しの飛び込みで席を確保するのはむっっっちゃ難しいお店らしいんだけど、ジョニーズを束ねる月島さんが話しを付けてくれた。出来る女は違いますなぁ!


「えっ!? じゃぁTUKIOの皆さんって今は、正確に言うとジョニーズじゃないんですか!?」


「そうそう。代表はやっぱり月島さんだけど、今所属してるのは『株式会社TUKIO』なんだよ。ほら、色々あってぐっさん……、夜摩口やまぐちが脱退したでしょ? あの時にさぁ」


 ビックリするほど美味しい海鮮が並ぶ大部屋で、私はTUKIOの國分こくぶんさんとお喋りしてた。


 つやっつやの大トロをわさび醤油に付けてはむっと食べながら、ジョニーズの裏話やら何やら、色々聞いてた。


「て言うかお刺身うっま……」


「フラムちゃん、よく食べるねぇ〜」


「だって美味しいんですもん」


 お母さんも真緒も、思い思いのナイスミドルを捕まえてお喋りしてる。やっぱ完全にホストクラブやでこれ。ジョニーズのメンバーを指名出来るとか豪華過ぎるけど。


「で、結局どうするの? 今回はマジであの子たちしか都合つかないんだけど」


「もう大正さん来てくださいよ。鍛えるんで」


 國分太一さんと喋ってると、反対に座ってた大正さんに聞かれるけど、別に私はアレでも構わないのだ。ただ命の保証をしかねるだけで。


 と言うかダンジョンの中では、やっぱりどうしても不測の事態は起きるはずだ。怪我したり、最悪は人死が出たり。


 たとえヤラセ100%だとしても、ダンジョンの中って時点で危険はゼロにならない。


 それを許容して対策すべきはジョニーズやテレビ局の方であり、私じゃない。むしろ私は対策される方やぞ。


「あ、私ちょっとトイレ 雉撃ちに……」


「フラムちゃんそれ男性用の慣用句。女の子はお花を摘みに行ってね」


「私、お花さんを摘むだなんて…………、そんな可哀想なこと出来ませんっ」


「………………雉は撃てるのに???」


 茶番を繰り広げつつ、私は席を立ってトイレへ。チラッと会場を見渡すと、お母さんも真緒も楽しそうに食事をしてた。よきよき。


 特に真緒は、大好きなスマッポの語郎ちゃんから膝の上に乗せられてご満悦だった。真緒は「マジであった怖い話」のファンなので、スマッポだと語郎ちゃん推しなのだ。唯一来てくれたスマッポの人が語郎ちゃんで良かった良かった。


 ちなみに私は無貝なかいくん推しだ。ドラマATAREアタレで好きになった。


 さて、和室の襖をストンと開けて外に。おトイレはどこか。漏れてしまうぞ。


 純和風の料亭内を適当に歩いて、料理を運んだりしてる仲居さんスタッフにトイレの場所を聞いて移動して、用を済ませる。純和風でもトイレは洋風なんだね。


「ふぅ……」


 ハンカチを口に咥えて手を洗い、濡れた手をハンカチで拭う。濡れたハンカチは蒼炎で少し熱して水分を飛ばしてポケットへ。


 スッキリしてからトイレを出ると、


「…………あり? お父さん?」


「ん? ……んっ!? 優子っ!? どうしてここに!?」


 何故かお父さんが居た。


「あれ、お父さんが呼ばれたお食事って、ここだったの?」


「ゆ、優子もか?」


「あーいや、私たちは別の場所だったんだけどね。ちょっとトラブって、会場変えたの」


 偶然にも、お父さんの上司が選んだお店もここらしい。


「お父さんも雉撃ち?」


「…………優子は変な慣用句知ってるな。まぁそうなんだけど、実際はダル絡みして来る上司からトイレの名目で逃げて来たんだ」


 移動してきた私たちと違って、向こうは既にえんもたけなわって感じらしい。酔った上司がウザイそうだ。


「あ、じゃぁ丁度いいし、こっち来てよ。少しくらいなら良いでしょ? 私のお父さんって事で挨拶してってよ」


「良いのかッ!? え、TUKIOさん達は居るのか!?」


「居るよ〜」


 お父さんはTUKIO大好きなので、剛腕DASHダッシュとか放送中は必ず見てたし、再放送も録画してた。


「あ、でも永瀬さんと夜摩口やまぐちは居なくて……」


「あー、今は三人だものな。仕方ない……。嬢島じょうしまさんと國分こくぶんさん、末岡まつおかさんは居るんだろ?」


「居るよ〜」


 雉撃ちに来たらお父さん捕まえちゃったぞ! 私はウキウキするお父さんを連れて意気揚々と部屋に戻った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る