べしゃりステージ。
あの後、検査目的の入院は追加一日で済んだのだけど、私の目覚めを嗅ぎ付けたマスゴミが病院に群がって来たので、家族以外面会謝絶にして時間を稼いだ。
どうやって嗅ぎ付けたんだアイツら…………。
それでその後、アイズギアで
DMは基本的に匿名だけど、ダンジョンで使う自分の活動名を決めて入力すると、視聴者にその名前が見えるようになる。
匿名なのは未設定の時で、やる気があるなら芸名を決めて思いっきりやれる仕様なのだ。
私が自分に付けた
でも蒼炎は、今や私の代名詞的なスキルだ。しょうがないよね。
DMはもちろん、ペイッターも同じく蒼乃フラムの名前で登録して、アカウント取得から一週間たった今では、フォロワー七千万人という………………。
こわっ。
「はーい今日も始まりました、べしゃりステージ! 本日はなんと豪華ゲスト三名をお迎えしております!」
マスゴミのせいで病院から下手に動けなかった私は、ペイッターのアカウントに大手のテレビ局が接触してくるのを待ち、それまでは絶対に人を釣れる
「まず一人目はこの人! 前オリンピックにて堂々の金メダルを獲得した柔道女子世界王者! 金メダリストの
「はーいどうもー!」
そしてジワジワとフォロワーを増やしていく私のアカウントに接触して来た、餌につられたテレビ局のアカウントとメッセージを介してやり取りを開始し、わざと事を大きくしてどんどん上役を引っ張って交渉を重ねた。
最後は多分テレビ局の一番上の人とメールのやり取りにまで発展して、いくつかの条件を付けて取引は合意で終わる。
「そして二人目、体格が厳しい日本人でありながら、見事ヘビー級のベルトを獲得した世界ヘビー級チャンピオン! 岸本キッド選手!」
「うぃーっす! 今日はよろしくー」
そうして今日、テレビ局の協力を得て病院に群がるマスゴミを躱した私は、ムジテレビのバラエティ番組に出演するため、スタジオまでやって来た。
今は舞台袖に縮こまって、名前を呼ばれるまで待機中だ。
ちなみに、出演する番組は毎回ギリギリのトークを魅せつけることで人気のバラエティ番組、『べしゃりステージ』。
そして今日私がゲストとして出演する事は司会を務める人気芸人と、私のメイクとか衣装を手掛けてくれたスタイリストさんの二人しか知らない。
今もバレないようにフード付きのポンチョを着て身を隠してる。
もしかしたら他の人も知ってるかも知れないけど、少なくとも知らないはずだと私は聞いている。
いや、これは私から言い始めた事じゃなくて、思いっきり場を盛り上げるためのサプライズとして向こうから言われた事だ。
「そしてそして、三人目のゲストはヤバいですよぉ〜? 僕もさっき知って度肝抜かれましたからねぇ〜。皆さん心の準備はよろしいですかぁ〜?」
私がマスコミを封じる為の作戦、第一弾。テレビに思いっきり露出する事。
私が隠れた存在じゃなくて、こうして思いっ切りテレビに出る事で希少性を減らし、マスコミに対する
テレビのスイッチを入れれば普通に見れる相手に対して、我先にと群がって来る事は無くなるはずだ。
「それではお迎えしましょう! 現時点で、全世界にたった十人しか確認されていない覚醒者の一人にしてっ! 世界で唯一のダンジョン攻略者! 三ヶ月もの地獄を戦い、愛する忠犬の魂と共にその地獄を越えて来た、世界最強の女の子!」
司会の人気芸名がテンションを爆上げでマイクに叫び、その前口上の段階で、誰が出て来るのかを理解した人達は、出演者も観客席の一般人も、みんなが驚き騒ぎ出す。
「非公認ながらも間違いなく世界最高峰のダンジョンアタッカー!」
あ、ちなみにダンジョンアタッカーを生業にするには、資格は必要無いが登録は要る。武器関係の申請を通すのに必要だからだ。
そして
まぁ武器の購入が出来ないだけで、武器無しで良いならダンジョンアタック自体は出来るんだけどね。
「蒼き炎を纏う姫、蒼乃フラムさんッッッ! 登っ場ッッ!」
呼ばれたので、隠れてた舞台袖の一角から、身を隠すフード付きポンチョを脱ぎ捨てながら会場に入る。
お偉いさんには「思いっきり盛り上げてくれ! そうすれば何してもいいから!」とオーダーされてるので、お言葉通りに思いっきり盛り上げるとしましょう。
ツインテールに整えられた髪の先から蒼炎がチリチリと吹き出し、カメラアングルを意識して迫力のある蒼炎操作を実行する。
お偉いさんが用意してくれた斧ちゃんのレプリカを、インベントリから蒼炎を介して手元に召喚しながら歩く。まるでゲームのラスボスのイベントシーンが如く……。
この為だけに参考資料をネットで調べたんだよ。
そして身に纏う炎を、レプリカでめっちゃ軽くなってる大戦斧の一閃で吹き散らす。
散らされた蒼炎が会場を舞い踊り、バラエティ番組の浮ついた空気を一瞬で幻想に塗りつぶす。
蒼き炎を纏う姫とか言ってくれたからね。お言葉の通りに青い炎を纏ったお姫様として出て来ましたよ。
「どうも皆さん初めまして、蒼乃フラムと申します」
ゴンっと大戦斧レプリカちゃんで床を叩きながら、一番目立つ場所まで来て挨拶をした。控え目にポージングも忘れない。
床を突いた大戦斧レプリカちゃんを、また蒼炎で消してインベントリへ送り、私はスタイリストさんが決めてくれた黒いゴシックドレスのスカートをつまんでカーテシー。
これで掴みはバッチリでしょう。
今頃、お偉いさんが手を回した
お偉いさん、これで数字は取れますよね。
私の豪華な、いやちょっと豪華すぎる登場にスタジオが歓声で爆発して、私の登場を前もって知っていた司会の芸人以外はみんなが「おいおいマジかよww」みたいな顔をしてる。
そしてめっちゃ私を見てる出演者の女の子は、たしか天才子役と名高い
「ようこそおいでくださいました! SNSで騒ぎになってましたけど、ついにお目覚めになられたのですね!」
「はい。たくさんの方に心配して頂いたみたいで、ありがとうございます。私はこのとおり、元気です」
早速司会の芸人さんが私に話しを振り、無難な受け答えと共に飛びっきりの笑顔で返す。マスゴミに対する一番のカウンターは、こちらが先に民意を味方に付けることだ。この可愛い笑顔をみんな守ってくれぃ。
「いやはや驚きましたねぇ〜。なんとも豪華な登場で」
「やりすぎましたか……?」
「まさかまさか! 本物の蒼炎が見れて感動ですとも! なにせ世界に十人しか居ない覚醒者で、蒼炎のスキルは今のところフラムさんだけのオンリーワンですからねっ!」
ちなみにペイッターで、私が自分のスキルを蒼炎と呼んでる事は既に発信してる。なので多分、このスキルの名前は今後も蒼炎で固定されると思う。
スキルの名前もDMに入力して自分が決めて良いので、実際に私のステータスには蒼炎のスキルがその名前で表示されている。この後に同じスキルを覚醒させた人の名前まで同じになるかは知らない。
「ではでは今日もやって行きましょうべしゃりステージ! あ、フラムさんもどうぞお席へ!」
「はい、失礼しますね」
私は司会に促されて唯一空いていた椅子に座る。
さて、私は上手く出来るだろうか?
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