ついでに東京救ってきます。
銀級だからゲージが銀色なのか、それとも銅級のゲージも銀色だったのかは知らないけど、とにかく銀級は限界らしい。銅級のゲージは今度確認しに行こう。
この試験管みたいなゲージに残された1ミリの猶予が、約一ヶ月分の時間なのか。そう思うと、とても頼り無い猶予に思えて、事の不味さを理解させられる。
今回のダンジョンアタックは、今更だけど日本の未来を背負ってる。だから当然、政府とも色々な打ち合わせが行われてる。
と言っても、私達への窓口はダンジョン課の笹木さんが専任みたいな感じなので、笹木さんとの打ち合わせだったけど。
このアタックでは基本的に、私達は好きに攻略を進めて良い。けど守らなきゃいけない事もいくつかある。
まず、政府の人がこのヒートゲージを撮影してDM配信で24時間垂れ流すから、それを私達の誰か、もしくは全員がアイズギアで視界の端にでも常に表示しておく事。
その担当の人がダンジョン外配信するアカウントはもう全員が登録済みで、配信が始まると通知が来て自動的にタブが開くように設定してある。
今はまだ係の人も来てないけど、リミットが近付けばそのうち始まるだろう。
そして、その配信を常に確認して、ゲージの減少が認められればそのまま続ければ良いけど、私達のモンスター討伐速度がゲージ上昇分を下回った場合は、ミリットギリギリで帰還してダンジョンブレイクに備えること。
スタンピード、ダンジョンブレイク、モンスターウェーブ。呼び方は何でも良い。とにかく銀級が
もちろんその時は私達だけじゃ無くて、対策装備を充実させた自衛隊の人々も此処に集結して迎え撃つ計画がちゃんとある。
要は、魔力さえ含有してる物質ならばモンスターにも効くのだ。
だから私が
銅は元々、銃火器の弾薬にも使われてる金属であるし、ダンジョンブレイクは回数×階層のモンスターが解き放たれる。銀級の一層は銅級の五層クラスらしいので、銅級十層のボス素材から作られた武器弾薬はさぞ効く事だろう。
そんな武器が用意出来るなら、そも自衛隊が戦えよって言われるかも知れないが、どっちにしろ銅竜取ってきたの私だし、今更感が有るよね。
銀級討伐を子供に任せるのは倫理的にダメだから自衛隊派遣します! だけど銃弾無いと戦えないので銅竜倒してきて下さい!
…………うん、意味分かんないね。なら最初から私が銀級行く方が早いし楽だ。
だって、銀級一層より銅級十層の方が強いんだぞ。十層まで遠いし。
まぁ銀級一層のモンスターが銅級五層クラスって言うのも、サンダーレオを倒した事の無い人が下した評価だし、信憑性も微妙なんだけどさ。
一応、この評価の根拠もちょっと調べたんだ。
決死の覚悟で色々な測定機材を五層まで持っててって、百人近いレイドでレオを好きに動かせて、レオが叩き出す破壊力や速度、体の大きさや運動量から予測される筋肉密度などから予測される戦闘力を様々な方面から数値化して、そして同じ事を銀級一層でも行う。
銀級一層はレオクラスのモンスターが雑魚として大量に出て来るので、こっちの測定は生存者ゼロって言う最悪の結果に終わったけど、その時に散逸しなかったデータから割り出した結果が、大体レオクラスだって言う答えになったそうだ。
具体的に言うと、雷能力の無くなった肉体派のレオ?
映像も残ってなくて、ネットで拾った噂だとどんなモンスターだったかって色々な情報が倒錯して真実が分からなくなってるんだけども。
レオみたいなライオンだったって意見もあれば、ウサギだったとか、亀だったとか、イモムシだったとか、色々だ。もしかしたら全部居たのかも。
一応、計画としてはリミットギリギリで一層に潜り直してモンスターを減らすって計画もあったみたいだけど、三人でどれだけ減らせるのかも分からなかったからボツになった。
私達の殲滅速度がポップ速度に負けたら意味無いもんね。それを測る術も無いし。
「さて、そろそろ行こうか」
現在、朝の九時。考察も心の準備も、もう充分である。
準備はした。覚悟はあの日に終えている。
だから、あとは、私の蒼が燃やすだけ。
「--お、お気持ちをどうぞッ!」
「んぁ?」
さぁ行くかと思ってパーティーロープをインベントリから出すと、そのタイミングで背後から声がかかる。マスコミのインタビュアーだ。追い払ったのにガッツあるなぁと思いつつ、まぁそれくらいなら応えるかと振り返り、右腕を空に掲げる。
黒い手袋の中は親指が一本無くなった私の手があるけど、そんな事は感じさせないナチュラルな動きが出来る義指は、流石DDスクリプト製だと安心出来る。
「東京には大事な家族と、大好きな友達が居るので」
人差し指で空を指す。なんか俳優がやってたポーズの真似っ子だ。
「大事な人のついでに、東京救って来ます」
正直、大事な人以外は皆オマケだけど、まぁ言わなくて良いだろう。偏向報道とかされたらたまったもんじゃない。
マトモに受け答えするとガチのインタビューが始まりそうだったから視線を切って、もうダンジョンに向かう。
お母さんとニクスにパーティーロープを渡して、その真ん中を右手で持つ。武器は左手だ。
流石にこの重量武器を、義指付きの右手に任せるのは不安なので。親指と小指は物を握るのに凄く重要な指なのだ。どっちかが無いとろくに物が握れなくなる。
お母さんとニクスに目配せして、タイミングをはかる。ナイトは守護霊のスキルで自動的に私についてこれる。
アイコンタクトで、せーの…………!
「ダンジョンアタック、スタートォ!」
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