武技とは。



「む? 武技が知りたい? もう既にほぼ出来ておるのにか?」


「ほぁえ?」


 マヌケな声が出てしまった。


 武芸百般道場を皆で訪れ、そして武技の事を師範に聞いたらコレである。


「フラム、君がやってる蒼炎の操作だが、それがほぼ武技に当たる。魔力に血を通わせるチカラを持たぬ者でも魔力を武器にする為に作られた技なのだ。魔力に血を通せるフラムにはあまり必要な物とは思えないが……」


 要するに、武技とはスキルをスキル無しでやる技法の事らしい。


 例えば魔力を腕に纏って相手を殴る。これだけでも立派な武技だ。だって魔力量が上がったら干渉力も上がるんだから、腕に魔力を纏うのは立派過ぎる『武力』である。


 師範の言う『魔力に血を通す』っていうのが覚醒スキルだとして、覚醒してない一般アタッカー達にも魔力の操作技術を与えるのが武技らしい。


 ふむふむ、なるほど。確かに、私達はあんまり必要ない?


「あの、それをあえて学ぶ事は出来ませんか?」


「むっ? 其方そちらは?」


「初めまして、フラムの母です。プティルとお呼びください」


 しかし、お母さんは武技って技に食い付いた。何故だろう?


「お母さん?」


「大丈夫よフラムちゃん。お母さん、きっと強くなりますからね」


 意気込んでるお母さんに細かく聞くと、納得した。雷だと早過ぎて強過ぎるし燃費も悪いから、普通に扱える『別属性扱い』の攻撃方法が欲しいそうだ。


 そう言えば、アイビールがお母さんのスキルに刺さってたもんなぁ。あの時、武技があったら無属性の攻撃で普通に倒せてたかも知れないのか。


「そう言う事なら、やっぱり私達も学ぶべき? この先、私達の苦手属性とか出て来るかも知れないし」


「蒼炎も白雪も、追加効果の方でゴリ押し出来そうに思えるけど、手札を増やすのは良いと思うのよ。一緒に頑張りましょっ」


 という訳で、やっぱり皆で武技を学ぶ事にした。


 スケジュールは私のをベースに、四日来て二日学ぶって形なった。ただ、ローテーションで回すのではなく、全員で六層を三日攻略して、四日目はサナの町に帰って一日休んで、次の二日に学んで、また三日六層へ。


 そんなスケジュールで決まる。師範はサナの住民なので六層とか五層とか聞くと会話がバグるけど、その辺はこっちが気を使って喋れば良い。


「では、武技の教導は四日後だな?」


「お願いします」


「フラムの武器指導はどうする?」


「武技と並行してお願い出来ませんか?」


「その分、大変だぞ?」


「望むところですよ」


 皆でそれぞれDDを支払い、契約完了。


 私達が教わる武技は、簡単に言えば魔力を纏った攻撃って説明で済むけど、実際は『魔力を研ぎ澄ませて、武器に変える』のが信条らしい。具体的に言うと手刀で岩を斬る感じ。


 もちろん徒手空拳としゅくうけんだけじゃなくて、武器を使った武技も学ぶ。魔法ではクロウによって飛ぶ斬撃を身に付けたけど、武技では『伸びる斬撃』が学べるそうだ。


 聞けば、使い勝手は良さそうな技だと思う。


「じゃぁ、しっかりと二日学べるように、バッチリ働いて来ますか!」


「そうね、とりあえずは確認が先よね」


「はやくいこー? ニクス、コルドゥラで全部やっつけちゃうから!」


 そうと決まれば、師範に別れを告げて道場を出た。今日のところは六層へ向かう。


 ここで『実は五層の遺跡には六層への階段なんて無かった!』とかだと一周回って笑うけど、そんな事は全然なかった。


 町を出て森を歩いて、遺跡に行って鍵を使えばちゃんと階段はあった。


 おばちゃんから買った『鍵』は手に握り込めるサイズの水晶であり、それを石造りの廃教会みたいな遺跡にかざすと扉が開く。


 この遺跡、一応破壊して中に入れないかって調べてみたけど無理だったんだよね。


 自信が有るならサナの町でおばちゃん殺して鍵を奪っても良いんだろうけど、多分無理。おばちゃんも師範も、私達が束になっても勝てそうに無い。


 蒼炎燃やし尽くそうとか思っても、多分その前にこっちが殺される。接して見てよく分かった。


「さて、遺跡内部にボスくらいは居ると思ったんだけどね」


「圧も無いし、やっぱりこの階層にはコプトしか居ないのね。コプトなんてあれ、本当にモンスター扱いで良いのかしら?」


「ニクス、コプトちゃん好き! お家に連れて帰りたい!」


 コプトがモンスターか動物かの判別なんて研修者とか学者に任せるとして、連れ帰るのはどうなんだ……?


 まぁ良い、とりあえず私達はこのまま一度六層に行く。そこでモンスターの種類などを確かめつつ、少しずつ攻略していこう。


 最悪はDDに物を言わせたランク4スクロール連打戦法で六層を潰してヒートゲージを減らそうか。


「…………これさ、国の為なんだし、私達がスクロールに使ったDD分くらいは補填してくれるのかな?」


「その交渉も後で国としましょうね」


「うーん、こう言うのもお父さんがサポートしてくれるならスムーズなのかな…………」


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