ダンジョンネーム。
「まおは、きょうから『
「お母さんは、『
「おかーさんかわいいもん! だいじょーぶだもん!」
二人のダンジョンネームは決まった。
真緒は白乃ニクス。命名法はいわずもがな。
私のフラムは炎のドイツ語だけど、真緒のニクスはラテン語で雪って意味になる。もちろん、雪を意味しつつ可愛い響きの言葉をネットで探して引用した結果だ。
お母さんは
紫そのままだと
なので、紫を意味して文字数が少なく、
色彩としては少し違うけど、紫を意味するって点だけは間違い無いので採用。
私の蒼と真緒の白は音の読みが二音なので、同じく二音である藤を選んで
プティルに関してはインドネシア語で雷を意味する。
いやぁ、雷を意味する言葉をネットで探して四苦八苦したよ。どこの国も全然可愛くないんだもの。
でも頑張った甲斐あって、二人とも私のダンジョンネームと同じ命名法で、音の数も苗字と名前で三音ずつと全員一緒に出来て良かった。
「よしよし。じゃぁダンジョンの中ではくれぐれも実名呼ばないようにね。覚醒時の動画もさっき見たけど問題なかったし、この後も何か有ればDMが編集で消してくれるとは思うけど、どのくらい信用して良いかも分からないんだし」
そも、ダンジョン自体がDMを作った者の仕業なのだ。
ダンジョンに困ってる人類がダンジョンを討伐する際の色々に、DMを信頼するってのは形としておかしい。本末転倒とかってレベルじゃない。
もう覚醒時のダンジョンアタックから一時間経過してるので、さっきの動画はアップされてた。それを見たところ、私が真緒の名前を呼んだりするシーンは上手く編集されてた。
でも、ねぇ? 根本的な話しをすれば、ダンジョンなんて無ければこんな心配要らないんだし。
「まぁ良いや。やることはやったし、そろそろもう一回行こっか。今日は慣れるのが目的だけど、ダンジョン入って大して時間も経たずに出て来てちゃ意味無いからね」
私がそう言えば二人も頷いてくれる。それから、二人が体力的、精神的にもしっかりと回復したら、もう一度ダンジョンに向かう。
ダンジョンに入る時は毎回装備の確認をさせる。何が不備になるか分からないから。これは何も無くともルーチンワークとする。
それが終わったら早速、二人にロープを握らせてダンジョンホールにダイブする。今回は二人ともアカウント持ち出し、何より覚醒してる。武器は一度インベントリへ。
武器握ったままのダイブは危ないからね。
「リトライ!」
そうして再び飛び込んだ大穴。三度目の暗闇に包まれて、何回受けても慣れない浮遊感。闇を抜けたら最後はシュタッとそつなく着地する。
顔を上げれば、そこは相も変わらず暗いのに視界が通る意味不明な洞窟だった。
ダンジョンに侵入したら、やっぱり装備の確認だ。最初の五分でやるべき事は全て終わらす。
「うん。始めよっか」
蒼炎を燃やしてインベントリから武器を取り出さ、そのまま蒼炎を小さく維持して光源にする。ダンジョン内では常に武器を持つべし。
「二人とも、今から私は配信も意識して喋るから、その辺はよろしくね」
「はい、分かりました優ちゃん先生」
「わかった〜」
DMは謎の多いサイトだ。と言うか九割方謎で構成されてる。
ダンジョンアタック終了からきっかり一時間後にアップされる編集動画も、例えば私が今ここで「初めまして皆さん、蒼乃フラムです」とか挨拶すれば、そこを動画の最初に持って来てくれる。
そう、アタッカーが配信を意識して行動すれば、それに沿った編集をしてくれるのだ。
自分で編集し直せるシステムもあるけど、よっぽど自分の編集技術に自信がある人じゃないと手を出さないくらいには、DMのデフォルト編集は質が良い。
まるで、アタッカーの頭の中を常時覗いてるかのように。
そんな情報も、ネット社会の今ならちょっと電脳を漁ればいくらでも出て来る。誰かしらが調べて実践してるから。
実際、
まぁ、そんな訳で、私が今からそれを意識して二人に教えていけば、それは立派なハウツー動画になってくれる。…………はずだ。
「じゃぁまず、せっかくだし二人にも挨拶してもらおっか?」
「ふぇ……?」
「あらあら、優ちゃんに無茶ぶりされちゃったわ? 意識して喋るなんて、お母さん無理よ?」
「良いの良いの。そう言うのは全部私の方でやるよ。そう言う勉強もして来たし。ほら、せっかくダンジョンネームも決まったんだから、今のうちに宣言しとこ?」
こう言うのは出したもん勝ちなのだ。
ダンジョンネームが先に広まれば、最悪本名なんかがバレても、ダンジョンネームの方が通りが良かったら個人情報なんて勝手に埋もれて行く。
「じゃぁマー…………、じゃないや。ニクスちゃんからお願いね。学校で初めてのクラスに自己紹介する感じで」
危ない。自分で「くれぐれも」って言ったくせに、自分でミスりそうだった。
「あーい! …………えっと、どこにむかって、あいさつすればいいの?」
「あぁ、それはDMの方が勝手に調整してくれるから、適当でいいよ。やりにくかったら、ナイトの方を見てやって見て?」
私がそう言えば、一時的に消えてたナイトが気を利かせてくれた。私達三人の正面一メートルくらいのところでお座りしてくれる。
ふむ。五分なんてあっという間だからさっさとやろう。
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