配信スタート。



「はじめまして、しろのニクスですっ!」


 とっても可愛い真緒が、ニクスとしてニコニコ笑顔の挨拶をする。ナイトに向かって。


「藤乃プティルです」


 私達と年の離れた姉妹と言われても通じるくらい若くて綺麗なお母さんが、プティルとしておっとり笑ってご挨拶。


「皆さんご存知、蒼乃フラムです。ご存知じゃない人もはじめましてっ!」


「わぉんっ!」


「はい、この子もご存知、ナイトです!」


 最後に、私とナイトも虚空に挨拶をして今日のダンジョンアタック第二幕が始まった。


 意識してここを動画の始まりと定めて挨拶したので、探索が終わればその後一時間後に、意識した通りの編集がされるはず。


 将来的には収入源としても期待してるから、人に見られる配信についても勉強して行きたいね。今日は二人のダンジョン練習だけど、私の配信練習でもある。


 ニクスまおがやり易いように相手役をしててくれたナイトも、最後は私の胸元に飛び込んで来て一緒に挨拶。今日もバッチリ可愛くて頼りにしてるよナイト。


 うん、このパーティはナイトも入れて四人パーティだからね。みんなで挨拶だよね。ご挨拶出来て偉い偉い。


「さて、今日は私のお母さんである藤乃プティルと、妹の白乃ニクスを連れてダンジョンアタックです。二人は今日が初めてなので、私が付き添ってダンジョンの事を教えていきます」


「はい、教わりま〜す」


「ますっ!」


「ぉん!」


 てへっと舌を出して手を上げるお母さんと、追随するニクスと、元気に相槌を打つナイト。なんだこれ、目の前が幸せ過ぎる。


 さて、スタートリミットの五分は過ぎたけど、過ぎた瞬間ゴブリンがポップする訳じゃない。


「ではでは、ダンジョンアタック初めていきまーす」

 

 まだ敵影が見えないから、もう少しだけ配信モードで行こう。


「今日のアタックはですね、蒼乃フラム式のレベリング理論を披露しますので、ご興味がある方は是非最後まで見て行って下さいね」


 ひとまずは動画頭の挨拶はキッチリ出来た。その頃になってやっと現れるゴブリンたちが、通路の両側から歩いて来る。

 

 挟み撃ちにされて逃げ場が無い状態だ。


「では、最初のレッスンから行きましょう」


 まず、この状況の抜け方からかな。


「銅級ダンジョンは一層から三層まで、この様な洞窟型の階層です。基本的に一本道がグネグネと曲がりながら進み、偶に別のルートからの合流があったりで迷路化してます」


 なので、場合によってはこんな感じで挟み撃ちにされる。と言うか一層から三層までは立ち止まるとすぐこうなる。


「私も三ヶ月の間ではよく挟み撃ちされましたけど、なるべくなら回避するべき事態です。基本的には足を止めずに動き続けてれば回避出来ますが、今こうして挟み撃ちにあってしまった場合はどうするのか」


 もちろん、今の私なら目を瞑ってても両側共に殲滅出来る。けどダンジョン初心者がこんな目にあったらまず間違いなく死ぬ。


「正解はコチラ。お母さんとマ……、ニクスちゃんも良く見ててね。それで、すぐ真似して」


 銅級ダンジョン低層での挟み撃ち。突破方法はこうする。


 まず片側に狙いを決めて突っ込む。そして正面に居たゴブリンを一体殴り殺し、そのまま乱戦気味に押し込んで通り抜ける。


「ダンジョンの外にいるレベルゼロであれば、ゴブリンの攻撃はどれも致命的。でもダンジョンに一度でも入って魔力を得てる者ならば、ゴブリンの攻撃は全て『ちょっと強い大人の格闘攻撃』くらいのダメージしか有りません。なので覚悟して無理やり突っ切れば死なずに挟み撃ちを突破出来ます」


 正直、今の私はゴブリンに何されても大したダメージにはならないけど、ちゃんと防御と回避を意識しながら動いてる。なぜなら後ろで二人が見てるから、お手本にならなくちゃダメなんだ。


「片側へ抜けたら、パーティメンバーの状態と人数次第で殲滅か逃走かを選んで下さい。今回は殲滅します。二人とも、スキル使って良いよ。思いっきりやって」


「わかった!」


「こう、かしら……? 紫電っ……!」


「しらゆきっ……!」


 紫の稲光いなびかりと白の吹雪がゴブリン達を飲み込み、あっと言う間に殲滅した。


 流石に覚醒者が二人も居て、二人とも全力でスキルを使えばこうなる。完全に予定調和って感じの結果だ。


「今回は私達が全員覚醒者と言う破格のメンバーなので、初心者が居ても簡単に行きます。でも、普通はもっと大変なので慎重に行きましょう。どんなに無様でも、生きてれば私達アタッカーの勝ちですから」


 私も、ゴキブリ食べたりヘドロみたいな血を飲んだり、色々と無様を晒した。けど、生きてる。そして今これだけの力を持ってる。


 つまり、そういう事だ。


 速攻でゴブリンをたいらげて、洞窟を黒焦げにしたり凍り付かせたりと、凄まじい暴威を振るった二人を見る。


「二人とも、初めの内はスキルを使う時、思いっきり力を込めて使って良いからね。調整とか制御とか考えなくて良い。むしろ自分の負担になりそうな使い方をバンバンしていこう」


「分かったわ。…………その理由も、後で教えてくれるのよね?」


「もちろん。て言うか今から教えるよ。これが今回のキモだし」


 そう、今日の目的の三割くらいはこれなんだ。邪魔者ゴブリンも居なくなった事だし、すぐにでも始めよう。


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