わおーん!
銀級の一層で散々とウサギを殴って来た私達は、そのまま一層のキャンプで一泊してから五層を目指す事にした。
道中、紅犬に乗って移動しようとするお父さんを見た私の中のナイトが「わんわんわぉーん!」と怒り出し、巨大化し、私達全員に「乗れ!」と促して来た。
「ナイトはお父さん大好きだから、紅犬なんて新参者に愛犬ポジションを奪われるのが嫌なのかな」
「わん!」
「いや、紅犬はそんな感じのあれじゃ無いんだが……」
紅犬の自我がどうなってるのか、実のところお父さんも詳しくは分かってないそうだ。何となく「こうじゃないか?」と言う予想はあれど、確信では無い。
一応は個性のような物も見えるから、紅犬は紅犬と言う生き物とも言えるのだけど、お父さんから言わせると「自分の分身みたいな気もする」と言う。
しかしナイトには関係無い。「浅田家の犬はボクだぞ!」とでも言うように、私達を背中に乗せた。そして二層に出て来るウサギやカーバンクルを踏み潰しながら進軍した。
「わおーん!」
ぶっちゃけ無敵に見える。モンスターがゴミのようだ。
「大きさって、ストレートに強いからなぁ」
「もう全部ナーくんでよくない?」
「いや、これマジで無敵に見えるけど、実際は蒼炎を経由してるから私の魔力がゴリゴリ減ってるんだよ」
蒼炎の能力で踏み潰したモンスターから回収はしてるけど、それも収支をプラスに傾ける程の吸収量じゃない。
普段から巨大化したナイトが最強だからソレでって済ませる事は出来ない。流石に燃費が悪過ぎる。
今だって一層で回収した草をバンバン燃やして魔力を回復し続けてる。ナイトがこうしたいと主張するなら私は全力でサポートするのだ。だって私の
そんなこんなであっと言う間に四層まで駆け抜け、私の魔力もスッカラカンになった。
「ここが四層か。…………お土産に持って帰ってくれたコプトはここに居るんだったか?」
「うん、そうだよ。美味しいよね、コプト肉」
「ニクスもコプトすきー! 飼いたい!」
そう言えば真緒はずっとコプト飼いたいって言ってたな。連れて帰りたいって。
その割りには普通に狩って捌いて食べるけど。どう言う心境なんだろうか。アレかな、ウサギ肉食べるけどウサギは可愛い、って感じなのかな。
「あ、というか今気が付いたけど、
正直、攻略時はアイビールの肉なんて確保してる余裕が無かった。無限に襲って来るからとにかく殺して凍らせて壁にして、って時間だけがそこにあった。
基本的にダンジョンで得られる食肉は、地上のそれに準じてる。肉食の獣は臭みが酷いし、虫やネズミだって相応の味だった。
ならウサギ肉は美味しいはずだ。二層に居るカーバンクルはキツネっぽいから美味しいかどうか分からないが、ウサギは美味しいはず。
ダンジョンの外ならすぐにアイズギアを使って調べるのに、ダンジョンの中ではブラウザを立ち上げようとして失敗するのを繰り返してる。気になったら即検索が癖になっちゃってる。
アイズギア、考えるだけで視界にAR表示出来るからホント便利なんだよなぁ。
「む? ウサギ肉が食べたいなら、帰りに捕まえるか?」
「うん、そうしよう。食肉に適したダンジョンのモンスターは基本的にすごく美味しいから、どうせ隠しダンジョン行くなら美味しい食材を持ち込みたいよね」
コプトと合わせて研究所に持ち込み、扱い易いように処理してもらおう。チルドパックとかにして貰えればダンジョンでもすぐ食べれる。
そんな雑談をしてるうちに、数十頭のコプトを仕留めてインベントリに収納し、一同は五層へ向かう。
ここまで一緒に居て、なんと言うかお父さんの万能具合が凄いなと思った。
お父さんの紅犬は強化を司る『紅』と召喚が混ざったスキルであり、自身の強化と手勢の用意と言うシンプルに強い内容になってる。
四層の狩りも紅犬が
一層から三層までの戦闘もお父さん自身が肉体性能の暴力で暴れつつも、死角などを召喚された紅犬がフォローする。
他にもパーティメンバーに紅犬を憑依させてバフを与えたり、本当に色々と出来る。能力外の事もお父さん本人を強化すれば大体なんとかなる。
なんと言うか、凄く腐らない能力だ。私の蒼炎なんて完全なる暴力だし、戦闘以外じゃ本当に大道芸くらいにしか使えないのに、お父さんのスキルは日常でも腐らない。
膂力、聴力、視力の強化。この三つだけでも日常で役に立つし、意思疎通や直接操作が可能な紅犬は汎用性が高い。単純にお手伝いさせても良いし、警察犬みたいに何かを追わせても良い。
本当に腐らない能力である。いや、だからこそナイトも張り合ってるのか。
ボクの家族だぞ。ボクのパパだぞ。
そう主張するようにお父さんへ甘えるナイトがとても可愛い。
ライブのコメントもナイト一色になる。ナイト人気は相変わらず凄まじい。
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