笹木さんからの依頼。



 お父さんをジョニーズさん達に紹介し、尚且つ私がお父さんの上司さんの方へ会いに行って予備の竜泉ぽしゃけを賄賂として抱えさせる事で、まぁなんか良い感じに終わったお食事会。


 いや、実際は顔を合わせて擦り合わせるべき人員を速攻でリタイアさせちゃったので、良い感じもクソも無いんだけどさ。お食事会の意味が無くなっちゃったし。


 ともあれ、そんな翌日。心身共に充分な休息が出来たと判断した私は、今日からまたお母さんと真緒のレベリングを行おうと考えてた。


 しかし、その前に朝九時頃に来客。笹木さんである。


 朝九時の来訪はマナー的にどうかとする向きもあるが、今日は普通にアポ貰ってたので問題無い。


「フラムさん、率直に言って恨みますよ」


「あ、もしかして銅竜素材の事です?」


 家に上がった笹木さんを居間に案内して席を勧め、お茶を出して一息ついた所で開口一番苦言を吐かれた。


「なんっっっっですかアレッ…………!」


「何ですかと言われても、銅竜の素材ですとかしか……」


 いや気持ちは分かる。誰よりも分かるよその気持ち。だって同じこと思ったから政府にぶん投げたんだもん。


「どうなりました?」


「特級の爆弾過ぎて、情報が漏洩した瞬間に元を・・潰し・・て先・・を捻・・って・・を繰り返して、大忙しですよ」


「ああ、やっぱ漏洩はしちゃいますか」


 発電力に関する情報なんか、世界規模の事だもんな。そりゃスパイくらい居るか。国内か国外かは知らんけど。


 お話しが分からない真緒はキョトンとしてて、お母さんも銅竜素材の事は殆ど伝えてないので首を傾げてる。


「それで、政府からフラムさんにご依頼が…………」


「……えっ、まさか銀級控えてるのに、今から銅竜ボコってこいとか言いませんよね?」


「…………その、まさかでして」


「うそやん」


 訳分からない仕事が来たな。


 銀級を黙らせないと国が滅ぶリミットが二ヶ月切ってて、そんな時に片道三ヶ月かかった銅竜の元まで行って来いと? 正気?


 いやまぁ、流石に二回目ならルートも何となく覚えてるし、多分もっと早く行けるとは思うけどさ。でも時間が無いのは変わらない。


「えーと、それは国が買い取る感じです?」


「まぁ、そうなりますね」


「ちなみにお幾ら?」


「鱗はグラム200万円程を予定してます」


 ……………………ぴゃっ!? グラムで200万!?


 24K純金でもグラム5000円くらいだよね? それの400倍?


 銅級ダンジョンの最奥でしか手に入らない、現状私しか取って来れない素材って思えばまぁ、妥当な値段かも知れないけど…………。


 でも、結構な金額だよなぁ…………。


 銅竜の鱗、あれ一枚で5キロくらいあったし、じゃぁ鱗一枚で百億円……? やっばいなぁ。


「その他の銅竜素材も、相応の値段で考えております。フラムさんの武器に使われるだろう素材の研究にも、国が全力で協力しますし」


「私の武器に使う銅竜の合金情報がいち早く集まって私が助かり、国もトンデモ素材が手に入りつつ、私って言う先駆けから情報が集まって嬉しい。メーカーも国の支援を受けて武器作れて助かる。所謂いわゆる三方よしって奴ですね」


 ふむ。ちょっと真剣に考えてみる。


「今の私なら、低階層を全力で突っ切って行けば五層までは一日で行けるでしょう。その後、うろ覚えのルートを確認しながらですけど、なるべく戦闘を避けて最短を行くとして…………」


 長めに見て、一周に一週間か?


「どのくらい欲しいんです?」


「あるだけ欲しいそうです。諸外国も五月蝿うるさそうですし」


 まぁそうか。日本だけそんな壊れ素材保有してたらアメリカとか中国とかいろいろ文句言って来そうだよな。

 

「流石に私が使う分は売りませんからね?」


 考えてみる。どうしようか?


「んー…………」


 丁度良いかな……?


「ん、分かりました。依頼は受けます」


「本当ですかッ!?」


「その代わり、これからもご支援お願いしますね? それと、銀級が優先なので、保証するのは最低で一体分です。最悪は私の手持ち分売るので、失敗しても銀級を優先します」


 あくまで口頭での約束でしかないけど、依頼を受けた。私は未成年なので書類に残すと逆に不味いのだ。未成年労働の証拠を政府が残すのは不味いのだ。


 私が依頼を快諾…………、快諾したかな? まぁ概ね快諾したので、笹木さんは安心して帰って行った。


「さて、二人とも」


 笹木さんを見送った後、私は今後の予定をお母さんと真緒に伝える。


「ごめんね。悪いけど二人には、地獄を見て貰うことになる」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る