萌え萌えきゅんっ☆
これは、致死量……!? だ、ダメだっ! 可愛さの過剰摂取で、私の体が持たない……!?
そうして、私は致命傷を受けた。妹が可愛い…………!
真緒を抱える白い髪のメイドさんも、そばで見ていた黒髪パッツンのメイドさんも、遠くで見ていた私達を案内してくれた茶髪のメイドさんも、今のを偶然見ていた他のお客さんも、目の前の私も、一人残らず心臓を狙撃された。
可愛すぎる。この可愛さは、……もはや兵器である。人が殺せる可愛さだ。
危険、あまりにも危険! レベルアップで手に入れた耐久では耐えられない貫通攻撃だ!
レベル8? 即死だよ!
「えへへ〜、おいしくなったかなぁ?」
「なった。なってる。絶対なってる。美味しいに決まってる」
「お嬢様の愛情がいっぱい入ったので、きっと美味しいですよ♡」
「むしろ私が食べたい……」
被弾したお客さん達がよろめきながら心臓を押え、茶髪のメイドさんも壁に寄りかかりながら崩れ落ちた。
白い髪のメイドさんは大変満足そうに真緒を席に戻し、黒髪パッツンのメイドさんはボソッと本音を漏らした。
「おねーちゃん、おねーちゃんもまおのおむらいすに、もえもえきゅんやって……?」
「え、マジで言ってる?」
私も満たされ過ぎた心で笑い、さっそくオムライスを食べようと思ったら真緒のお願いにインターセプトされた。
え、マジで? 本当に? お、おねーちゃんもやるの?
「……あ、うん。わかった。……あの、お願いしていいですか?」
キラキラお目々の真緒を裏切れるはずもなく、私はメイドさん達にお願いして抱えてもらう。
レベルが上がっても身長が伸びる訳じゃないので、私も床に立つとテーブルに届かないのだ。
私のお願いを受けて、最初は白い髪のメイドさんが私を抱えようと手を伸ばしかけたんだけど、黒髪パッツンのメイドさんがそれを阻止して私を抱える。
そんな二人の視線がバチバチして、目線で何やら訴え合ってる。
-なんで邪魔したの。
-妹様で充分でしょ。お姉様は私が貰う。
-……チッ!
-これで公平よ。
そんな所だろうか。
黒髪パッツンのメイドさんに両脇を持ち上げられた私は、めちゃくちゃ恥ずかしい思いを飲み込んでポーズを取る。ちなみにナイトは椅子の上に置いた。
真緒の魔法が可愛すぎたからか、目撃した人も、見逃したけど見た人に聞いて今度こそと見てくる人も、みんな私たちのテーブルを見てるので恥ずかしさが天井知らずだ。
もう、どうにでもなぁれ……♡
開き直って諦めの境地に片足を突っ込んだ私は、胸の前で両手をハートマークにして、少しだけ蒼炎を使って魔法っぽいキラキラを演出しながら呪文を唱えた。
「美味しくなぁれっ♡ 萌え萌えきゅんっ☆」
呪文と共に腕を伸ばして、指で作ったハートマークを料理に向ける。
その時、私は極小の狐火みたいに揺らめく蒼炎の火花を散らして、愛情の魔法を真緒に贈る。
「……わぁあっ、きれぇー!」
「ふっふ、今のところ全世界でも私だけしか使えない、真緒のための魔法だよっ☆ 」
「おねーちゃんありがとぉー! だいすきぃー!」
ふふっ、お姉ちゃんは燃え尽きたよ。羞恥心よ、蒼炎で燃えてくれ……。
さすがにこれ以上は料理が冷めると思った私は、早く料理を食べようと、私を抱えたままの黒髪メイドさんを見た。
「…………」
「…………」
「…………あの?」
「…………」
「…………」
早く席に戻して欲しいと思う私をよそに、黒髪パッツンのメイドさんも白い髪のメイドさんも、今の光景を見ていた全員が全員唖然として居た。
生で見る蒼炎って、そんなにショッキングかな?
「…………」
「あの、メイドさん?」
「っは!? し、失礼しましたっ。お席にお戻ししますね♪︎」
声をかけるとすぐに正気へ戻った黒髪パッツンのメイドさんは、素早く私を席に戻して(そこに居たナイトは一回椅子から飛び降りてから椅子に座った私の膝の上に飛び込んで来た)から、優雅に一礼してみせる。
「さぁ、食べよ」
「うんっ!」
元気いっぱいの真緒と一緒に、少し暗くなり始めた時間に早めの夕食を食べる。
今日の夕食はメイドさんに囲まれて食べる、真緒の萌え萌えきゅんがかかったとびっきり美味しいオムライスだ。心して食べねば。
……まぁすぐ食べ終わってお代わりするんだけどさ。ハヤシライスもあるしね。
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