メイドの鑑。
ゆったりした空気で食事が進む。
真緒もニコニコして美味しそうにオムライスを食べて、その笑顔だけで私は白米が食べれるくらいだ。
途中、蒼炎を涎代わりにダラダラと口から零すナイトにも、料理を分けてあげた。
スプーンで直接食べさせて上げると、喜びに鳴きたいけど鳴けなくて「くぅーん、くぅーん」と音量を抑えて喉を鳴らしていた。
吠えると迷惑になるから、ちゃんと我慢出来るナイトはとても偉い。
真緒がお皿の二割を食べる頃には私のオムライスが空になり、予め目を付けていたメニューから炒飯を選んで追加注文をする。
何故か白い髪のメイドさんと黒髪パッツンのメイドさんは私たちの席を離れないので、注文自体はすぐに出来た。
私の注文を受けた二人は、また目線でなにやら牽制しあって、最後は小さく舌打ちをした黒髪パッツンのメイドさんがキッチンに消えていった。
そこで、黒髪パッツンのメイドさんが居なくなったスペースから見えた店内の様子に、私はメイドさん達が付きっきりの理由を察した。
「あぁ、そっか。そうだよね。…………メイドさん、ありがとうございます」
「いえいえ、お嬢様のためですので♡」
全員ではないが、店内に居るマナーの悪い客の何人か、スマートフォンや何かしらの携帯端末を私達に向けて、無断で撮影しようとしてる様子が伺える。
メイドさん達は私たちのテーブルに付きっきりになって壁になることで、それを邪魔していたんだ。
「……本当に、ありがとうございます」
「お嬢様のためですので♡ 我々はメイドですから♡」
「…………お姉さんたちは、メイドの鑑ですね」
「はぁぅう、お褒め頂き嬉しいです……♡」
いやホントに。お世辞じゃなくて。この気遣いは「マジでメイドじゃん」って思ったよ。
凄く助かる。私だけなら別に良いんだけどさ、妹を撮影されるのはダメだ。凄くダメ。
だって、
それを理解した訳じゃ無いだろうけど、残った白い髪のメイドさんも真緒を中心にディフェンスしてくれている。
凄く良いお店だ。やっぱりちょっと料金が高いけど、値段に見合ったサービス精神だと思う。本当に助かる。
「それで、お嬢様は、その…………」
「はい?」
「あのぉ、やっぱり…………」
真緒がオムライスを可愛く食べてる様子を見ながら、残ったハヤシライスも一瞬で完食した私に、白い髪のメイドさんがモジモジしながら声をかけてきた。
何が聞きたいのか最初は分からなかったけど、すぐに察することが出来て私は頷いた。
「えーと、気になってるのは私が何者か、ですか?」
「……ご、ごめんなさい」
「いえ、良いですよ。逆なら私も気になると思いますし」
「えと、ではやっぱり……?」
「はい。私は蒼乃フラム本人です」
「やっ、やっぱりそうですよねっ? それと、そのヌイグルミみたいなワンちゃんは……」
「もちろんナイトです。幽霊であり、身体が蒼炎なので、大きさも自由なんですよ。私もつい最近知ったんですけど。…………あ、他のメイドさんが来たら追加注文良いですか?」
やっぱり、
十中八九そうだと思っても、ほぼ確定だとしても、あくまで予想でしかないのと本人からそうだと言われるのは、天と地ほど差がある。
さすがに薄らと透けてチリチリと蒼く燃える犬とか、この世にナイト以外居ないはずだけど、やっぱり確認するまでは違う可能性もあるからね。
「あの、あのっ、不躾ですが、そのっ、お嬢様のサインなどを…………」
「ああ、別に良いですよ。病院で目が覚めたら知らぬ間にファンとか居て、人にサインする立場になっててビックリしましたけど、ちょっとだけ慣れてきました」
その後、本物の蒼乃フラムとナイトだと確定した私たちは、更に手厚いサポートをメイドさん達から受けて、鉄壁の防御で無断撮影から真緒を守り抜いた。
その代わり、お店に居るメイドさん全員と握手してサインして、ナイトもミニ版肉球スタンプサインをして、無断撮影を防ぐメイドさんの壁に囲まれながら、代わる代わるメイドさんたちと写真を取って、最後はメイドさんみんなとLIKEのIDを交換してた。
もちろん情報の取り扱いには気を付けると言ってくれたけど、これだけしっかり真緒の事を守ってくれたメイドさんたちが、無断で私のLIKEのIDをどこかに流すとか、そもそも思ってない。
思ったより美味しかった料理に満足して、メイドのお姉さんたちにいっぱい構って貰えた真緒もご機嫌だ。私もお店のフードメニューを完全制覇して満足。
結構な時間ここに居たけど、そろそろお帰りだ。
「それじゃ、また来ますね〜」
「おねーさんたち、ばいばーい!」
アイズギアの電子決済で会計も済ませ、ご機嫌で手を振る真緒と一緒にお店を出て行く。
「「「行ってらっしゃいませお嬢様♡」」」
そんな私たちを、メイドさんたちは勢揃いで見送ってくれた。
今日の学び。メイド喫茶は子供に優しい。
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