アマズゥンに売ってる。



 自分でも驚くくらい、あの斧は私にとって大事な存在だったらしい。


 勝つために銅竜のお尻に刺しちゃったけど、当たり前に手元へ返ってくるつもりだったんだ。


「ゆ、優子? 大丈夫か?」


「優ちゃん……」


「おねーちゃん、なかないで……?」


 どうしよう、凄い悲しい。


 ナイトが死んで、ひとりぼっちだと思ってた私は、あの重くて大きな、凄い頼りになる斧ちゃんの存在を、自分で思うよりもずっとずっと大事にしてたみたいだ。


「わぅぅ……」


 ナイトが私に謝ってる。持ち帰れなくてごめんって謝ってる。


「ううん、違うよナイト。あれは私が悪いの。気を失うくらい捨て身になった私の、自業自得。ナイトは少しも悪くないよ」


 うん。ナイトは少しも悪くない。命を失ってからも私を支え続けて、蒼炎が消える時間が迫る中で、必死に私を外まで連れて帰ったナイトが悪いわけない。


 まさに自業自得。あの時諦めた私が全部悪い。気絶しないで最後まで戦ってれば持って帰って来れたんだから、私だけが悪いんだ。


「……ナイトが支えてくれたのに、私は諦めた。だからバチが当たったんだね」


 うん。…………どうしよう。本当に辛い。さっきまで忘れてたくせに、二度と戻ってこないって分かったら辛すぎて心臓が痛い。


 どれだけあの斧に依存してたんだろうね。銅竜のお尻に刺して手放した時は、武器が無いとか関係ねぇってイキってたのに。


「…………斧、斧が欲しい、大きな斧がっ」


「ちょっ、優子っ!? お前それ禁断症状出てないかっ!?」


 ち、力が欲しい……! 圧倒的な力が……!


 …………もう持ってるな??


「お、おねーちゃんがこわれたっ」


「斧が、斧が欲しいよぉ………」


「優ちゃん、優ちゃんを守ってくれてたあの斧と同じものは無理でも、大きな斧なら普通に売ってるわよ? ダンジョン用の物が」


 え、マジ?


「今は職業としてダンジョンアタッカーが定着しつつあるからな。アタッカーの為の武器なんかも普通に売ってるぞ?」


 両親にそう言われて、私はアイズギアですぐに情報を調べた。


 本当だぁ! アマズゥンに武器が売ってるぅ!


「す、凄い時代になったね」


「本当にな。まさか現代日本でロングソードとかが売られるなんて、一年前じゃ誰も予想出来ないだろ」


「優ちゃん、一応法律との兼ね合いもあるから、銃刀法に引っかかる武器は申請が必要よ?」


 あ、それもそうか。


 たしか、美術品としての日本刀だって許可証が要るんだから、ダンジョンの中でしか使わないとは言っても、実用する為の武器がなんの制限も無く買える訳が無い。


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