引越しと復学の予定。
滝谷を無事に地上までエスコートした日から一週間ほど。私も色々とタスクを熟して過ごした。
家族もそれぞれにやる事があって、皆が思ったより暇じゃない。
私達は揃いも揃って全員が一ヶ月以上もダンジョンに潜っていたので、本来なら日常生活で消化すべきタスクが山積みなのだ。
一ヶ月も放置したら中身が悲惨な事になってる冷蔵庫の掃除と補給とか、掃除とか、そう言った当たり前の事から始まり、お母さんならご近所付き合いとか、私と真緒なら復学を目指して勉強や課題の消化とか、お父さんなら支払い関係のアレコレとか。
それにプラスして、さらにダンジョンから持ち帰った品々の売却や、
お父さんもギルド設立に向けてラストスパートを掛けてるし、その合間に私は研究所に行って新装備開発のお手伝いなんかもしてる。
そんな折、私は研究所の技術者さん達にお願いされてた。
「サナの町まで!」
「流石にお断りします」
「そこをなんとか!」
「無理です」
要は、メイン素材となる鋼材についてサナ族鍛冶師に勝てないから、教えを乞う為に銀級五層までキャリーしてくれって依頼だ。お断りします申し上げます。
「四層でスローターとかしてたから、私達が軽々と五層まで行けると勘違いするのも仕方ないと思います。でも、あれは自分以外になんの憂いも無い状態だから出来ることでして」
ダンジョンとは危険な場所だ。それはもう今更語る事などない程に。
そんな場所で、一撃くらったら人生ログアウトしそうな方々を連れてキャリー?
冗談じゃない。私には自殺を
「エッゼは預けてあるじゃないですか。あれを解析してなんとか頑張ってくださいよ」
コンセプトとしては地上の方が勝ってるんだ。
私達が使ってるアイズギアの開発元であるDDスクリプトさんが大いに技術提供をして魔法陣制御装置を開発。それを大戦斧に組み込んで、シャフトを握る
そのコンセプトは素晴らしい。とても素晴らしい。
真緒の武器にはコルドゥラを初めとした様々な魔法も組み込まれる予定だし、私の方にも十種類以上の魔法陣が仕込まれる事になってる。
ただ、それも実用に耐えうる強度があってこそ。
エッゼに使われた素材を超える完成度が無いと、いくら魔法に優れる武器であっても意味が無い。戦闘中にぶっ壊れたら使えない。
「それに、私達もそろそろ学校に行きたいですし……」
そして何より重要なのは、私達の復学である。
迷宮事変に始まり、直近では銀級がブレイクするかも知れなかった東京近辺の学校は特に酷い影響を受けてる。
場所によっては避難が推奨されたので休学どころか休校した場所もあるし、迷宮事変が五月六日、つまり卒入学直後だったりしてカリキュラムがガタガタなのだ。
ダンジョンが発生しなかった県でさえ影響が大きかったのに、ダンジョンが二つもある東京なんて酷いことになってる。
学校によってはカリキュラムが遅れて八月卒業とか六月入学とかもザラにあり、学校関係者はスケジュールの調整にてんやわんやらしい。最近知った。
実は、私達が通う学校も、私達が休学した一ヶ月ちょっと後には休校となってた。
それがまぁ色々と問題が解決したり手続きや情勢を鑑みた結果、二週間後に学校再開と決まったらしいので、どうせなら私達もそれに合わせて復学したい。
「あと、私達の家も引越しとか予定してまして……」
別にお金が有るからもっと良い所に、って事じゃない。単純に家の場所がマスコミに嗅ぎ付けられたのだ。
笹木さんが握り潰してくれるから燃やしても良いんだけど、この先もそうやって「気に入らん! 死ね!」って生活を送るのもダルいから、せっかくだしマスコミにバレても困らないような場所に引っ越そうってことになってる。
セキュリティ強めのタワマンとか、雇ったゲートキーパーが常駐して邪魔者を追い払ってくれそうな豪邸とか、そう言うところに引っ越すのだ。
まだ物件は決めてないんだけど。
「という訳で、私も忙しいのでお断りします」
「そんなっ…………!」
「なんとかならないかなぁ!? 宝箱ちゃん!」
「とりあえずその私を宝箱呼ばわりするの止めません?」
会う度に足りない素材を提供してる私は、研究所では宝箱ちゃんと呼ばれてる。…………誰がミミックか。怒るよ?
「代案として、私が鍛冶師さんにお願いしてインゴット貰ってくるくらいが関の山ですね」
「ッ!? その手があったか!?」
「天才かい……?」
「皆さんちょっと頭良いのに馬鹿になるのも止めません? 新素材が関わると知能指数下がりますよね?」
信じられる? この人達、日本でもトップクラスの天才技師達なんだよ?
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