ひぇ。



 翌日。


 私はあの後、一度家に帰ってから荷物を持って来た両親から着替えや、その他諸々もろもろを受け取り、その諸々の一つである携帯端末を弄り回していた。


 私が貰える携帯端末はスマートフォンだと思ってたのだけど、お医者さんが言った通りにもう日本は私の知る一年前の日本とは違うのだろう。


 なんかこう、予想の四十倍くらい凄い物を貰ったのだ。


 DDスクリプト社製複合型携帯情報端末、アイズギア。


 超極薄の専用コンタクトレンズと腕時計のような腕輪型情報端末の本体がセットになった機械で、腕輪で処理された情報を専用コンタクトレンズに表示するといった仕組みになってる。


 しかもこれは、魔力の存在が根付いた今の人類の為に開発された最新型のシステムが使われていて、私が蒼炎を操る感覚で魔力を動かすことで端末の操作が行える。


 その実態がどんなものかと言えば、専用コンタクトレンズに表示される情報はARなので、いわゆるSF映画みたいな3Dホログラムで画面が表示されるフィクションの情報端末にしか見えないのだ。


 私が魔力で腕輪に指示を送ると、それに対応した画面が目の前に浮かび上がる。


 これはまさにSF映画にあるような網膜投影みたいに、専用コンタクトレンズへ直接表示されている映像なんだけど、使用者わたしからしたら、こんなのは完全に画面が目の前に浮いて表示されてるホログラムでしかない。


 SFだ。凄いSFだよこれ。


 ダンジョンで磨いた蒼炎の操作は、つまり魔力の操作と同義であり、私は魔力の操作で動かせる端末を手足のように操れる。


 スマートフォンは画面を触って感覚的な操作が出来るけど、アイズギアに至ってはもう、感覚的な操作どころじゃなく、思考その物で操作が出来てしまう。


 つまりイメージでは完全に『思考操作出来る超未来型ホログラム情報端末』なのだ。


 ダンジョンファンタジーが発生したら地球が魔力由来SFチックに進化した。意味が分からない。


 インターネットブラウザを表示していた私は、それに閉じろと念じればそれだけでブラウザのタブが消えるのだ。完全にSF映画の登場人物になった気分だ。


「…………でもこれ、楽しい」


 私は現実逃避も含めて、昨日からずっとこのアイズギアを弄り回している。


 …………だってさ、DMのあれ、私の三ヶ月をまとめた例の動画を改めて確認したら、再生回数が億を超えてるんだもん。


 おかしいよね? 動画配信サイトにアップロードした動画の再生回数なんて、世界的に有名な映像作品になったとしても数百万回再生されてればとんでもない事のはずだ。


 一千万を超えたらもう、投稿者は一種のスターですらあるわけで、なのに再生回数が億越え…………。


 しかも、しかも、しかもだ。DMの動画再生広告費…………?


 いや、広告とか無いのに広告費はおかしいかな?


 まぁ良いや。兎に角その広告費は、動画千再生につき一ダンジョンドル。ダンジョン特有の通貨レートで換算されるのだけど、一ダンジョンドルは日本円に換算すると現在約1200円。


 さっき確認した時点で『決死の三ヶ月』の再生回数は約六億七千万だったので、私のDMアカウントには六十七万DDダンジョンドルが保存されてて、日本円に替えると八億と400万円である。


 …………もうドロップ売る必要無くない?


 あと、もう一つ現実逃避したい理由として、そのドロップしたアイテムが大量に保存されてるインベントリを確認して、その中から現在判明してるアイテムの相場だけ見て計算してみると、それだけで四十億円を超えた。


 …………ひぇっ。


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