被害状況。
連絡を回したところ、国はすぐに対応を始めた。
まずは周辺の封鎖と、自衛隊の投入。もちろん自衛隊はレベルを上げてる者だけ。
その結果、いくつかの事が判明した。
まずダンジョンは出入り自由。入口の先にはそのまま通路が続いていて、来た道を戻ればダンジョンの外に帰ってこれた。
ただその代わり、隠しダンジョンはDMシステムがほぼ全て使えない。
自動生配信は無いし、DMにも繋げないから完全にネットから遮断される環境になる。そしてDMが使えないという事は、インベントリも使えないという事。
出入りは自由だけど帰還も使えないので、帰る時は入口まで戻って来る必要がある。
「…………協力要請、早くない?」
「仕方ない。帰還が使えないのにインベントリまで封じられたんだ。長期活動が可能な俺達が出るしか無いんだろ」
隠しダンジョンはインベントリが使えないが、それはDMに接続出来ないから取り出し処理が出来ないのが理由である。
なら機器を経由せずにスキルでインベントリを使える覚醒者はどうなのかと言うと、それは可能だった。
自衛隊に一人居る覚醒者。浅田家以外では日本唯一の覚醒者さんが確かめたそうだ。
しかしインベントリの内容量はステータスに依存するので、その方が一人で自衛隊全員の物資を運べる訳じゃない。
なら兵站を組めば良いと思うのだが、それも無理だった。これが最後の隠しダンジョン特性なのだけど、入場制限が存在した。
暫定で九人。今は隠しダンジョンの中に居るはずのライオンを含めたら十人まで攻略に参加出来るのだが、たった十人だとどれだけ続くか分からないダンジョンに長い兵站なんて用意出来ない。
そうなると、隠しダンジョンを攻略するには最低でも覚醒者が複数人必要となる。
「無視しても良いんじゃ無いかしら? 攻略する義務はないわよね?」
「でもライオンさん欲しくない?」
「懐いてくれるか分からないじゃない」
「実力で従える?」
「優子、それはペットって言わないの。奴隷って言うのよ」
それもそうか。お母さんに言われた私は認識を改めた。
「しっかし、酷い状況だね」
送られてきた資料を見ると、自衛隊に結構な被害が出てる。魔力含有弾頭を持ち込んでの調査だったらしいけど、中に出て来るモンスターが普通に強くて八人が死んでる。
メンバーを入れ替えたりして何度か挑戦してるみたいだけど、死者が着実に増えていくから今は打ち止めらしい。
「八人か。日本が保守的な国だと考えれば、結構頑張ったな」
「イメージだと一人でも死者が出たらマスコミ怖がって引いちゃう感じするけどね」
「どうしたのかしらね?」
「知らん。ケツに火でもついてるんだろ」
まぁ、ダンジョン関係の最前線が国を守るべき自衛隊じゃなく、家族のために頑張った少女って時点でお尻に火がつくよね。
自衛隊や警察は国民が頼る最後の砦じゃないといけないのに、今この國でダンジョン関係のトラブルで最後の砦扱いされてるのが民間人の私だもん。
「結局、どうする? 受けるか?」
「私はマーちゃんのライオンを捕まえたいから行きたいな」
「んー、私は反対かしら。真緒のペットなら普通のワンちゃんでも良いでしょう? ダンジョンに連れて行くにしても、銅級からゆっくりと育てれば良いのだし」
「真緒はおねーちゃん行くなら行くよ」
「反対一の賛成二、か」
「あなたは?」
「俺は家族の安全が確保されてるなら何でも良いかな。自衛隊が死んだって言うなら危ないのだろうが、今の俺達が全員で行っても危険か? って聞かれたら微妙だろ? だから今は中立だ」
賛成二、反対一、中立一で行くことになった。
そうと決まれば準備である。長丁場になるかもだし、物資はパンパンに持っていこう。また笹木さんにお願いしなきゃ。
………………笹木さん、警察のはずなのに私達専用の商人みたいになっちゃってるのは良いのかな。なんかちょっと申し訳なくなってきた。
「じゃぁ私は武器の整備お願いしに銀級行ってくるね? 五層に行かなきゃ本格メンテも出来ないからなぁ」
「あ、じゃぁ真緒も行く。おばあちゃんに魔法教わるの!」
「俺も行こうかな。まだ見た事ないし、五層の鍛冶屋に俺用の武器とかも作って欲しい」
「あら、じゃぁ全員で行きましょう?」
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