覚悟と勇気。
私の説得が出来ないと悟ったお母さんが泣き崩れた。
ああ、またお母さんを泣かせてる。私はやっぱりバカヤロウだ。とんでもないクソガキだ。
私の決意を見たお父さんは、男泣きを隠すように私を抱き締めた。
ぶっきらぼうだけど優しいお父さんが、私は大好きなんだ。
真緒は俯いて、ただ私の服を掴んで、震えてる。
大丈夫だよ真緒。もうお姉ちゃんは諦めないから。真緒の自慢のお姉ちゃんで居続けるから。
「笹木さん、お話しを続けましょう」
「…………よろしいので?」
「はい。私は、大好きな家族が住んでる東京を、家族を、東京ごと守ってみせます」
大丈夫。前とは違うから。アイズギアもあるし、しっかりと準備出来る時間もあって、そのためのお金もある。それに危なくなったらDMシステムで帰還出来る。
「…………貴女の覚悟と勇気に、最大限の感謝を」
「えへへっ、自分の都合で戦うだけですよ。銀級ダンジョンが東京の外にあったなら、家族に危険が少ないなら、断ったかも知れません」
大丈夫。うん、大丈夫だ。
前より楽なはずなんだ。それに国の偉い人も手伝ってくれるんでしょ? むしろイージーモードだよ。
「支援は惜しみません。マスゴ--、いえマスコミの件もすぐに黙らせましょう。今後も、浅田優子さんが起こす殺傷事件は同様に処理します。…………貴女のような人が起こす事件なら、きっと相手に非があるでしょうからね」
支援の約束も頂いて、マスゴミの件も片付くうえに、国のお墨付きを貰ったから次からは殺しても大丈夫になった。
まぁそれだけ、二ヶ月後の東京壊滅を防げる人材を優遇するのは当たり前だよね。マスゴミに優しくしても銀級ダンジョンのヒートゲージは減らないんだから。
「あっ、私って年齢的にダンジョンアタッカーの登録出来ないんですけど、非公認でも武器を用意して貰えるんですか?」
「もちろん。……と言うか特例でライセンス発行しますよ。当たり前でしょう。この特例に文句を言う人物が居たら、銀級のヒートゲージを何とかしてから物を言えって話しなのです。武器も望むものを望むだけ。必要なら企業を集めてコンペでも開きますよ」
「…………やった! これで斧ちゃんが買える!」
斧ちゃん、斧ちゃんが帰って来る!
私は笹木さんに、この銀級ダンジョン攻略……、いや、
まずはとにかく食料である。
今回はアイズギアを持ち込むから、最悪は帰還を使って日参も可能だ。
だけど、ヒートゲージの減少率は倒したモンスターの強さに比例する。つまりダンジョンの奥に進めば進むほどヒートゲージを減らしやすくなる。
だからなるべく帰らず、泊まり掛けで先に進む。帰還を使うと毎回最初からになるからね。ダンジョンの中はめちゃくちゃ広いので、日参してたら先に進める気がしない。
そして、もう二度とダンジョンの中で飢えたくない。
あれは本当に地獄なんだ。ゴキブリとかミミズとかクモとか、食べないで済むなら食べたくないに決まってる。心を閉ざしてなかったら絶対餓死してた。
だから食料は持っていく。それはもう大量に持っていく。出来れば美味しい物を、凄まじく大量に。
幸い、私は覚醒者なのでインベントリが自由に使える。インベントリはどうやら、本人の魔力量によって収納量が変わるらしい。そして私はレベル8。相当な量を持ち込めるはず。
次に武器。出来れば斧。大戦斧。斧ちゃんの後継が欲しい。
それも私は特例でライセンスを貰えるらしいので、コレについては問題無い。大金を注ぎ込んで特注しよう。
まぁ、特注なんてしなくても、
その中から気に入ったものを選べば良いと言われるけど、企業が絡むと面倒が増えそうだなぁ。
そりゃぁね? 私はコレでも一応は世界唯一のダンジョン攻略者らしいし、そんな
本気の本気で仕上げた自慢の斧を持ってさ。
そんな訳で、大量の食料と水の用意も、武器購入に掛かる制限の解除も国がやってくれる。と言うか武器の費用も国が負担してくれるらしいので、遠慮なく甘える事にした。
一番大事なその二つが問題無く通り、あとは可能ならば欲しいってレベルの要望も伝えていく。
食べ物と武器を除けば、私がダンジョンで一番欲しいのは丈夫な服だ。
だって、私ってダンジョンの中であんなに薄地のワンピース着てたから、序盤の時点で既にボロボロ。最後の方なんてほぼ裸だったんだ。
それをまぁ謎技術によるリアルタイム修正が入ったとは言え、ライブ配信されてたんだよ?
率直に言って死にたい。
だから、『何があっても破けない!』って、そのくらいの気合いで作られた服が欲しい。予備と着替えも含めて三桁くらい欲しい。私はもうライブ配信ですっぽんぽんになりたくない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます