駆け付け一発。



 昔のゲーム廃人偉い人は言いました。


 レベリングとは周回に始まり、周回に終わると。


 ………………昔のって言うか、さっき調べたらそんな格言が見つかったんだけどさ。わたし一年前は普通の幼女だったし、ゲーマーの格言とか知らないもん。


 さて、そんな訳で再び周回です。


 前回はギリギリ日帰りだったけど、今日からは泊まりになるからお父さんにも連絡済み。


 数日間帰れないから、しばらくホテル暮らしをして欲しい。


 それと、無茶をするからDMを見ないで欲しい。


 この二つをお願いして、微妙な顔をするお父さんをホテルに押し込んでからやって来た代々木公園。


 さくっと入場して、でも全員が覚醒者なのでレンタル更衣室はキープしなくて良いので、着替える為だけに一時間借りて準備。


 全員でふりふりのワンピースに身を包み、新武器を引っ提げていざ出陣。


 インベントリが自由に使えない非覚醒者だったなら更衣室はキープしておかなくちゃだけど、私達全員インベントリ使えるからね。着替える場所とシャワーだけ使えれば良いから、帰りにもう一度借りるだけで良い。楽だなぁ……。


「あ、入場も適当にして、五層集合で」


「あいっ!」


「スパルタねぇ」


 ダンジョン入りもあえてバラバラに行い、五層で集合する事にしてアタック開始。


 ロープとか使わずに入るとランダムに飛ばされるので、ダンジョン入りをミスるとソロを強制される。けど今回はわざとソロなのだ。


 もう二人もレベル4だし、五層まで命の危険も無いだろう。一応アイズギアでDM開いて、視界の隅にお母さんと真緒の様子は見れるようにしてるけど。


 と言うかこれ、お互いにアイズギアで生配信を確認してたら、リアルタイム通信出来ちゃうよね?


 私が喋った内容を配信を見たお母さんか真緒が返事して、その返事を私は二人の生配信で聞くと。なるほど、使えるな。


「よし、行くよナイト」


「わぅ!」


 久しぶりに二人きり。ナイトと一緒にダンジョンを駆け抜ける。


 新しい大戦斧、BBC-GDは初代斧ちゃん程じゃ無いけど手に馴染む。市販の武器やサンプルで貰った物とは比べ物にならない性能になってた。


 蒼炎を噴きながら加速して叩き付ける新戦斧……、この子にも名前を付けようか。ゴシックドラゴンだからゴスドラかな。ゴシックロリータをゴスロリって言うもんね。


 ゴスドラは斧である筈なのに、まるで名刀の様な斬れ味ですれ違うモンスターを引き裂いて、シャフトのしなりも良い具合だ。ヘッドの重さを十割以上の威力にして獲物に叩き付けてくれる。


 くるくると斧を回して、バチバチと炎を噴きながらダンジョン内部でパルクール。すれ違うモンスターは切り刻み、消し炭にしながら五層を目指す。


 ダンジョンはゲームにあらず。だからインスタンスエリアなんて物も無く、広大なエリアは最初の転移以外にランダム要素が無い。


 アイズギアを起動して内部に保存してある一層のマップを出す。有志が集めて揃えたダンジョンのマップ。


 駆け抜けた道、曲がり角、分岐の位置と数と方向から現在地を割り出して、階段までの最短ルートを構築。


「ふッ…………!」


 ゴスロリワンピースの隙間から、青いフリルから蒼炎を吹き出して疾駆する。


 ジェットエンジンとは言わないけど、私は蒼炎を吹き出すことである程度の加速も出来る。私はその加速を使って地面を滑るように走り抜ける。


 新装備のお陰か、それとも単純に慣れか、今日は五層までにかかる時間を短縮出来た。ニューレコードって奴だね。


「二時間か。早く来すぎたかな? お母さんもクーちゃんも、まだ三層の序盤だし……」


 お母さんと真緒のDMアカウントを除けば、強制生配信で映る景色がまだ洞窟の中。どっちもゴーレム見えてるから、二層は超えて三層のはずだ。


 さて、暇になってしまったから、とりあえずサンダーレオちゃんを探そうかな。


 最近、私がボコボコとサンダーレオを倒してるからか、見物に訪れるアタッカーも多くてそこら中にアタッカーが居る。そしてその人達に聞けばレオが何処にいるか大体分かるのだ。


 彼らは決して戦わず、レオを刺激しないように見守り、観光してるだけのアタッカーであり、言い方は凄い悪いがNPC的な存在だも思えば良し。「ここは始まりの村!」見たいな感覚で「あっちにレオ居るよ!」って教えてくれる。


 そうやって見付けたサンダーレオに駆け付け一発、


「毛皮寄越せテメェ……!」


 私は奴の頭をカチ割った。


 コイツ、毛皮めっちゃ高いんだよね。まだ私と、お母さんと真緒しか狩れないから当たり前なんだけど。


「ふぅ、良い稼ぎだぜ☆」


 羨ましがる周囲のアタッカー達を尻目に、速攻で頭を割った為にめちゃくちゃ綺麗な状態で仕留めたレオの毛皮を剥いで行く。


 あ、今日の色は褐色と黒の虎柄だったよ。コイツ、柄にもバリエーションがあるのか…………。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る