トリプル。
「フラムさん、どうですか……?」
「…………うーん」
微妙ですね。私は研究者さんにそう答えた。
「ダメですか……」
「エッゼと比べると、魔力の流れも少し悪いです。それに多分剛性も低いですね」
「サナの町の鍛冶師はどうやってあんな武器を……」
今日は、お偉いさんと美味しいお肉を楽しんだ日からもう一週間ほど経ってる。
私としてはダンダンファイヤーの件はすぐ終わらせたかったんだけど、どうやらお食事会で私が
だから私のダンジョンアタックで予定が伸びても怒られなかったんだね。どっちにしろメインとなるクソガキがまだ使えないから。
そこまで来たらもう別の人使えよって思うんだけど、クソガキハッピーセットは親がちょっと力の強い方々らしく、容易には切れないらしい。
………………もしかして最近
まぁ良いや。とにかくクソガキハッピーセットが復活しないと番組が始まらないので、その間に私はまた装備の更新をしてたりする。
今日は私の吐き出す素材を研究して装備を作ってくれる場所、通称『宝箱』と呼ばれる研究所に来てる。
此処では浅田家から齎される最新の素材が扱えるので、急造された割にはかなり強い力を持ってる研究所となってる。
なんでも、海外の有名な研究者も「私も此処で研究させてくれぇ!」と土下座交渉してくる程なのだとか。
現在、この研究所で造られてるのは私の新しい大戦斧。エッゼの後継だ。
エッゼ自体は全然余裕で現役装備なんだけど、やっぱり地上の技術者がダンジョンに負けてられねぇって言って火がついてた。
ゴスドラは五層までの戦いでボロボロだったけど、エッゼは四層でスローターしても平気だったもんね。
後は魔法ギミックも上手いこと組み込んで、もっと凄い武器にしたいと言うロマンも迸ってるようだ。
研究所へ遊びに来たら、さっそくと試作品を渡されて試用させられた。
その結果はまぁ『微妙』としか言えないものだったんだけど。
「これが一つの製品として見るなら良いんですよ。問題無いと思います。ただ、エッゼの後継器として使う前提だとやっぱり上位互換になってもらわないと……」
「ですよねぇ……」
「あ、でもコッチのグローブは良い感じでした。是非採用したいと思います」
データ取り用の部屋で装備を確かめてた私は、大戦斧じゃなくて一つの装備を褒め始めた。
それは『トリプル』と名付けられたグローブで、見た目は骨組みがくっ付いたライダーグローブみたいな物だ。
分類で言うとタクティカルグローブになるそうなんだけど、その区分がどう違うのか私には分からないので何も言わない。
私用のグローブは黒と青のツートンカラーで造られてて、サイズも驚く程にピッタリだ。
手袋はピッタリすぎると逆に使いづらい印象もあるけど、どういう訳かこの手袋は着け心地が完璧だった。手を握って開いて繰り返しても、動きが邪魔されないし可動域が減った気もしない。
実戦を想定してるから分厚い生地を使ってるのに、窮屈な感じが全くしない。
流石に『付けてるのを忘れそう』とまではいかないけど、それでもグローブの着用を
防御能力が高くて着け心地が良い。それだけでもこのグローブは採用に値するんだけど、メインのオススメポイントはそこじゃなかった。
このグローブ、生地の中に銅竜素材から作った魔導性フィラメントを織り込んで魔法陣を複数種類も仕込んであり、このグローブ一つで魔法が三つも使える優れ物だった。
「それもこれも、フラムさんが惜しみなく魔法陣の情報を下さったからですよ」
「流石に、研究所にはね? 私も恩恵が有りますし」
私が銀級から帰って来て少しすると、魔法陣を公開してくれーって要望が増えて、なんの事だろなって思って調べると、配信だと魔法陣が簡単な物に差し替えられてた事が判明した。
それを受けて、ダンジョンがダメだと判断したなら、大っぴらに全公開などは止めとこうと思った。
かと言って諸悪の根源であるダンジョンに全面的に従うのもムカついたから、一般でも実用性のある魔法陣は提供させて貰った。
例えばシールドは悪用も難しいから大丈夫だろうと思ってコレは出した。ボルトとクロウは攻撃性なのでダメ。
他にはランク1の魔法に『ヒーリング』って名前の回復魔法があったので、コレは世間に提供した。
ポーションほど即効性は無いけど、発動中はジワジワと回復してくタイプなので差別化も可能だろうと思う。病院関係でも喜ばれると思うし。
他にも細々と、冒険にも日常にも使えて悪用が難しそうな魔法陣は世間に公開して、それ以外は研究所にのみ教えた。これからも装備を作って貰うなら絶対に必要だからね。
で、そうして出来た新装備、タクティカルグローブの『トリプル』くん。
仕込まれた魔法はシールド、ボルト、ヒーリングの三種類。
使い方もかなり簡単で、それぞれの魔法陣は手の甲に重ねてある仕様なんだけど、魔法陣を始動させる為に魔力を通す
例えば、ボルトを撃ちたいなら人差し指の先端に魔力を集めると魔導性フィラメントに魔力が通って魔法陣が走り、ボルトが起動する。
シールドが使いたいなら手の甲に、ヒーリングが使いたいなら手の平に魔力を集めると魔法陣が動く。それぞれの場所にそれぞれの魔法陣を編んだ魔導性フィラメントの先端が置いてあるのだ。
「良く出来てるなぁ」
こうして、人類は新しく『魔法』を手に入れた訳だ。
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