魔法の難易度。
銀級五層に来てからのモンスター討伐を担当するローテーションだけど、仕組みは単純に交代式だ。
まず最初の二人が四層に行ってモンスターを二日狩る。そして二日過ぎたらサナの町で休んでた一人が四層に行って、一人と交代する。交代した一人はサナの町に戻って、町や森を一日調査して、次の一日を休んで、それからまた四層に行って交代する。
これを続けるだけで、基本的に二人は常に四層に居てモンスターを狩り続ける形だし、四層の討伐ローテを抜けるには四日かかる。一人がサナの町に居る時間が二日で、それを三人で回してるからね。
例えば私が四層の討伐に加わって、まずニクスがサナの町へ戻るとする。二日後に戻って来たニクスはお母さんと交代するので、さらに二日後に戻って来たお母さんと私が交代する形なのだ。
まぁ、私が何を言いたいかって、つまり
そう、六層へ行くにはサナの町に居る魔法ガチ勢なおばあちゃんから認められないとダメなんだ。私達が勝手にレベル4と呼んでる魔法をおばあちゃんの前で発動して見せて、やっと六層へ続く階段があるっぽい遺跡の鍵を
だから、六層へ行きたいなら魔法の練習をしてダンジョンチュートリアルの最終編みたいなサナの町をクリアしないといけないのに、今の私達はヒートゲージっていう厄介な物を背負ってるせいでそれもままならない。モンスター討伐を
さて、この状況をどうするか。
その答えはやっぱりローテーションだった。
と言っても形は変えない。二日ずつ交代で、四層に二人、五層に一人のローテはそのまま。
ただ、四層でスローター役をこなす人員は、一人でも良い。私達が四層に二人送ってるのは
いくら私達が強いからと言って、格下狩りを延々と続ける作業でミスが無いとは言えないし、不測の事態に一人しか居ないと命を落とす事も考えられる。
家族が死ぬ事だけは絶対に許容出来ないので、だから戦闘は基本的にツーマンセル以上じゃないと私は認めてないのだ。…………私一人なら別に良いかなってなっちゃうけど。
そんな訳で、四層に来た二人の内一人が、スローター役を見守りつつ魔法の練習をするって感じに落ち着いた。今日は私がスローター役を終えて、魔法の練習をする番だ。
魔法の練習をしてたお母さんとニクスが交代して、今日から二日、ニクスがスローター役をやる。それを見守りながら私はランク4魔法の練習を始めた。
魔法のランクは完全に私達が勝手に言い始めた事だけど、これも適当に決めた訳じゃない。教本に難易度別に乗ってるからそれに沿って決めた訳でも無い。
今や私達の配信で世界へと知られたこの世界の魔法は、魔法陣を魔力で一筆書きして発動する仕組みだった。ただ、他に丁度良い表現が無かったから一筆書きと読んでるけど、全ての魔法が「一筆」な訳じゃ無かったんだ。
私達が決めたランクの基準。それは魔法陣に使われる
簡単に言うと、ランク2の魔法は魔法陣を描く時、
ランク3なら三本同時に、ランク4なら四本同時にだ。
一本の線でも戦闘中に即時発動が出来ないレベルで繊細な魔法陣を、二本とか三本の線で同時に描くとか頭オカシイにも程がある。
右腕で四角を、左腕で三角を同時に描く事だって難しいのに、それを三本目の腕で星を、四本目の腕で六芒星を描けますかって話しなんだよね。
しかも、実際に描くのは三角四角や星の形じゃなくて、何処に出しても恥ずかしくないほど精緻に編み上げられたレースのコースターみたいな魔法陣をだ。
これ、道具無しでレベル1くらいの人がやろうとしたら、ステータス的な知性が足りなくて頭が爆発すると思う。正直やってられない。
「ぐぬぬぬ………………」
「おねーちゃんがんばってぇ〜!」
モンスターを氷漬けにして殺して行く妹から声援を受け取りながら、私は四層の森の中で地面に座って練習をしてる。
ひたすら指先から細い魔力の線を出して、それを魔法陣として組み上げていく。
「……ぐぬっ、ぬぐぐぐぅっ、……………あぁぁあ、またココ間違えたぁ! クッソォ!」
「おねーちゃん、お口わるいよー?」
「だってさぁー!」
めっちゃムズい。四本線で描く魔法陣の難易度がヤバい。
「いやさ、物語だと魔法職とかって凄い専門職扱いだったりするけど、納得だよね。こんなん片手間で覚えようとか無理に決まってるし」
魔法陣をただ真似るだけじゃなく、その意味を理解して使いこなせれば、独自の魔法だって作れるらしい。ガチ勢おばあちゃんが言ってた。
だけど、ただ真似するだけでもこんなに苦労する魔法陣を、その内容まで理解するとかどんだけ無理ゲーなのって思ってしまう。私に魔法職は無理だ。
「……………………はぁ、無理。息抜きしよっと」
「わぅ?」
「うん。ちょっと暴れる」
魔法の練習に飽き……、じゃなくて行き詰まった私は、モンスターを相手に暴れて憂さ晴ら……、じゃなくて息抜きをする事にした。
インベントリからエッゼを取り出し、石突きに仕込まれた鋼線に魔力を流す。
武器を下段に構えて引き、石突きを前にしてクロウの魔法陣を起動。そして下段から斬り上げるようにして、斧のヘッドで魔法陣を叩き斬る。
「クロウッ!」
瞬間、斬り裂かれた魔法陣から斬り裂かれたそのままの斬撃が伸長して飛んで行く。エッゼの重さ、鋭さに私の膂力と蒼炎の魔力が乗せられたその魔法は、蒼く燃え盛る刃となって森を駆けた。
斧を振り抜いた姿勢で、またクロウを起動する。それを更に斬って、その姿勢でまたクロウを使う。振り抜いた姿勢で石突きが正面を向くようにエッゼを振り回しながら、気が済むまで蒼炎を使ったクロウを連発する。
木々が裂け、燃え、隠れ潜んでいたモンスターごと森をめちゃくちゃにして行く。
今までならこの規模の破壊をするのに、相当な魔力を使わないとダメだった。けど、魔法を得た今ならこれだけ暴れても全量の5%くらいしか使ってない。ドレイン効果で充分以上に回復出来てしまう。
「うーん、改めて蒼炎ってチートだなぁ……」
いや、それとも魔法の存在がチートなのか。
だけど喜んでも居られない。だって、つまり六層からはこのくらいの戦闘力を前提にされてる可能性が大きいから。だからランク4の魔法を覚えるまで、六層に行けないギミックになってるんだろう。
私達はこの先、ちゃんと生き残る事が出来るのだろうか。
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