この先どうするか。



 政府の財布でダンジョンを攻略する事が一時的に可能となった私達だけど、だからこそ一つ、懸念が湧いてきた。


 この先、どうやって攻略するの? って言う懸念だ。


 だってさ、今は大規模殺戮魔法を安全圏から連打してるだけだから良い。


 しかし、此処から出てマトモな戦闘でアレを突破する? 無理では?


 カブトとゴリラだけでも無理っぽいのに、他にも暗殺狙ってくるキツネとかも居るんでしょ? どうするの?


 正直、カブゴリ戦争だって一組なら何も問題無いよ。普通に倒す自信なら有る。なんなら一人で良い。


 けど、カブゴリ戦争は六層の至る場所で発生してる。どうするのコレ?

 

 一組に喧嘩売ったら他のも駆け付ける…………、なんて仕様だと正直辛い。


「またギミックなのかしら?」


「あー、なるほど? 本来はランク4ぶっぱなして解決する訳じゃ無いのか」


「もしくは、攻性魔法じゃないランク4を使うとか」


 私達は集まって考えた。今のままだと六層を探索出来ない。


「…………もしかして、武技で何とかする? 気配を断つ技とかあるのかも」


「なるほど? それなら確かに、六層に行く条件が魔法と武技なのは納得出来るわね? 魔法で殲滅して超えるか、武技で隠密して抜けるか、二つに一つって事なのね」


 この予測が正しいなら、上手いこと出来てるダンジョンである。なんかもう進むのが面倒臭いな。


「ねぇおねーちゃん。もうヒートゲージ下げて帰ろ? 先に進むの、また今度で良いよね?」


「それもそうだねぇ。今回のアタックで最下層まで行かなきゃダメな理由無いし。お父さんに会いたいし」


「ん、ニクスもお父さんに会いたいよ」


 スクロールとニクスの自発分を合わせて、一日に計三発のランク4魔法ではヒートゲージの減りもまだゆっくりだ。

 

 それでも目に見えて減って来てるから頑張った甲斐は有るんだけど。


 ちなみに、六層でモンスター倒してるけど今のところはドロップがゼロだ。破壊不可オブジェクトの中で魔法乱打は許されないらしい。

 

 箱の中からいくら倒してもドロップはゼロで、経験値も極うっすーい物がチョロっとしか来ない。


 経験値の方は『経験』に発生するものだからゼロには出来ないんだろうね。


 そんな訳でレベル11にはなれたけど、四層スローターで溜め込んだ経験値によって上がっただけである。此処では経験値など稼げそうにない。


「とりあえずあれだね、六層を掃除してヒートゲージを減らしつつ、私達は武技と魔法を学んだら帰ろうか」


「そうね。一度学べば地上でも練習出来るだろうし、持ち帰った素材でまた武器や防具も作って貰えるかも知れないし」


 それもある。正直、もう私達が着て来たドレスとか予備も含めてボロッボロだよね。銅級の素材が銀級でずっと通用する訳無かったわ。


「私も魔導具に甘えないでランク4使えるように練習しなきゃだし」


「それはお母さんもそうね」


 魔法発動クエストのクリア特典『鍵購入権』は、ニクスが獲得してる権利である。

 

 そして鍵の所有権もニクスであり、私達はニクスが居ないと六層へ行けない状態なのだ。


 魔法も使えないし鍵も無いし、お荷物かな? 私達。


 あ、ちなみに今更だけど、ナイトは魔法を使えない。


 いや、正確には使えるんだけど魔力=生命力となってるナイトがランク4とか使うと命に関わるから禁止してる。


 ナイトの魔法、ダメ絶対。ナイトが死んじゃったら私本当に立ち直れないから本当にダメ。家族一人失った時点で私は終わる。いやぁ脆いな私。



 そうして四日、六層を魔法で掃除し続けた。



 そも、無茶な事をしてる自覚はある。本来なら大人数が此処に挑み、その過程でゲージを減らして行くだろう過程をワンパーティでやろうとしてるんだ。採算度外視のアホ攻略じゃないとどうにもならない。


 四層でのスローターも『経験値やドロップ』が目当てじゃなく、『殺す事』を目的として行動していた。効率的に『攻略』するんじゃなくて『駆除』を目的としてた。


 普通じゃないスタンスで普通じゃないやり方をして、普通じゃない結果を得ているのが今の私達だ。その代償は減っていくDDで、手に入れたのは『減少するヒートゲージ』と『日本円』だ。


 これでも微妙なんだけどね?


 だってダンジョンでも地上でも使えるDDを日本円で補填されるって、同額だと正直損してる。


 だってダンジョンで使えないんだもん。ならその分だけ日本円が上乗せされて然るべき。


 だけどスクロールも値段が値段なので、どうしようも無い事もある。今回は多少の損は受け入れようか。


 四日スローターやったので、今日は師範に武技を習う日だ。私達は全員で道場に行く。


「ああ、来たか」


「お邪魔しまーす」


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