詰んでる気がする。
「ひこく、あさだゆうこおねーちゃんに、はんけつをいいわたします」
「はい」
「はんけつ。ひこく、あさだゆうこおねーちゃんは、ゆうざい。いっしょうまおをカワイがる刑にしょす」
「はい」
あれから一時間くらい。
怒り狂って荒れ狂った真緒をお母さんが宥め、お父さんが色々と物で釣り、なんとか機嫌が落ち着いたところで私は処された。
「一生可愛がります」
「よろしい」
判決に従った私は、ベッドの上で可愛い妹を抱き締めて撫で回す。
私はこんなに可愛い妹を捨てて復讐を選んだ馬鹿者だ。
死んでお墓に入るまで、この可愛い存在を可愛がって甘やかしてデロンデロンにする人生を送るべきだ。
「ちょ、おねーちゃん、はずかしっ」
「いいえ、お姉ちゃんは一生真緒を可愛がる刑に処されたから、一生真緒を可愛がって甘やかしてデロンデロンのまふまふにします」
さしあたって三ヶ月の稼ぎを使って真緒を甘やかすプランを立てる。アイズギアで真緒が喜びそうなお金の使い方を調べ、ン十万もするとあるアミューズメントパークの宿泊施設に予約状況を確認する。
「ねえお父さん、ネズミーのホテルに予約入れていい?」
「は? え、なんだって?」
「だから、ネズミーのホテル。あの意味不明に高い、高級ホテルの予約」
「…………なんでだ?」
「え、真緒と行こうかなって」
DMの動画再生数だけで八億円あるのだ。多少贅沢したって構わないと思うんだ。
て言うか私、あれだけの想いをしてダンジョンから出て、未だに病室のベッドで寝てるんだよ? 高級ホテルくらいはバチも当たらないと思う。
「…………えっ、父さんは?」
「ん? 行きたいの?」
「おまっ、可愛い娘たちと遊園地とか、行きたいに決まってるだろっ!?」
「あらあら、お母さんは?」
「あ、お母さんも一緒に行こ! 保護者は居ないとダメだよね」
「父さんの扱いだけ酷くないかっ!?」
両親には、もう私の知性が子供の域を超えてると伝えてある。だから必要以上に子供扱いはされないけど、それはそれとして私は二人の娘である。子供だけで高級ホテルに遊びに行くのはダメらしい。
「というか、正直優子はそんな暇無いと思うぞ?」
「ふぁ? 何かあるの?」
「お前学校あるだろうが。一年も休んでる学校が」
「…………あー」
完全に頭からすっぽ抜けてた。
そう言えば私、まだ小学生だったね。
「休んだのはまぁ、今の知性なら勉強も余裕で追い付けると思うけど」
「それならうるさい事は言わないけどな。でもいくらレベルが高くても、優子はまだ八歳なんだ。勉強以外にも学校で学ぶことは沢山有るんだぞ」
それもそうだ。
特に、ダンジョンで真っ先に捨ててしまった道徳心なんて、学校で学び直すのは急務と言える。
人を殺しちゃダメだなんて当たり前のことを、今の私は頭では分かってても簡単に無視出来てしまう。客観視すると相当危ない状態だ。
昨日もお医者さんを本気で殺そうと思ってたし、このままはマズイ。相当にマズイ。
「それに、気安く出掛けるには情勢が悪い」
「……? え、情勢?」
「ああ。まぁ要するにマスコミだな。世界で唯一銅級ダンジョンを攻略した優子が目を覚ましたんだ。……マスコミが放っておくと思うか?」
「………………うわぁ」
凄く嫌なことを聞いた。
マスコミ。それは本来、現代社会で必要不可欠な情報を取り扱う職業であり、何よりも尊いはずの人々だ。
だけど、現実はいつだって理想とは掛け離れてそこにある。
まるで権力を笠に着てやりたい放題する中世の貴族みたいなゴミとクズばかり。
しかもゴミであればあるほど、クズであればなるほど何故か力を持っているのがマスコミって存在であり、要するに関わりたくない
そんな相手が目の色を変えて飛び付く垂涎の
「……最悪だ」
何が最悪かって、
だって、殺しちゃうよ。ほぼ確実に。
私が握ってる蒼炎という名の
そして今の私は、ダンジョンの中に倫理と道徳を置いて来たトリガーハッピー。
そんな危険人物にひたすらムカつくマスコミなんて
マズイなぁ。ヤバいなぁ。八歳で大量殺人犯はダメだよぉ……。
こんな感じで、頭では分かってるんだ。頭で分かってても、理性がダメ。
未だに私の
頭で法律は大事だねって思ってても、私の
……………………あれ、思ったよりずっとヤバい?
ヤバいよね? ダメだよね? 今の私はちょっと現代日本で生活して良い存在じゃないよね?
ヤバいヤバいヤバい、絶対にマスコミは寄ってくるのに、私はその時絶対に殺す自信がある。
ちょっとこれ詰んでる気がする!
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