八段階評価。



「さ、採点式…………?」


 私の持論のはしり・・・を聞いたお母さんが動揺してる。ニクスはそもそも良く分かってないので、ぽやっとしてる。


「そう。だからモンスターを倒しても結果に個人差が出る。真剣に戦ってた人と、巫山戯てた人と、巧かった人。倒したモンスターが同数だとしても、それぞれ同じ採点結果になる訳が無い」


 それがレベリングの結果がバラつく理由。


「モンスターを倒しても『一体・・につ・・き何・・ポイ・・ント・・』なんて方式で経験値を入手してる訳じゃないの。多分、戦闘の芸術点や努力値なんかを加味して経験値が算出されてるんだと思う」


 私はほぼ最初から、モンスターを殺す度に体へ蓄積されて行ったの感覚をしっかりと覚えてる。認識して、知覚してた。


 だから、才能がどうとか関係なく、私個人に於いても、討伐するモンスターが同種だろうと経験値ナニカの量がバラバラだったのを覚えてる。


 この、体に溜まって行く経験値を知覚出来るって人をネットで見た事ない無いので、もしかしたらこの能力は私固有の物かもしれない。


 もしくはナイトのお陰? 未だにナイトのスキルが判明してないからなぁ。今日はもう本当に、帰ったらナイトのスキルを調べよう。忘れない様にしなきゃ。


「要は、経験値って文字通りに経験値・・・なんだよ。アタッカーが戦闘で経験したあたいをダンジョンが判断して、それに応じた経験値採点をアタッカーに与えてるの」


 そりゃ、集団で安全なレベリングを心掛けてちゃ進まない訳だよ。


 安全な戦闘でどんな経験が積めると言うのか。


「ああ、もちろん経験値を与えてるのがダンジョンって言うのは何の憶測も無いよ。もしかしたらダンジョンを作った神様とやらが直々にくれてるのかも知れないし、経験値配り用の幽霊みたいなのがその辺に居るのかも知れないし」


 ただ、とにかくモンスターから直接発生はして無いはずだ。


 じゃないと、数だけ多くて強さも質も何も変わらないゴブリンでさえ経験値に個体差があるのはおかしいだろう。


「要は、真剣に戦闘をこなして、より苦労と努力をした方が貰える経験値も多いんです。経験した値なので、当たり前では有りますけど」


「…………じゃぁ、今このサクサクとモンスターを倒してるのも、そんなに経験値が貰えてないのかしら?」


Exactlyイグザクトリー。正解でございますわ、お母様」


「…………えっ!? おねーちゃん、ニクスこれ、がんばっててもつよくなれないの?」


 私が一つ一つ持論を展開すると、良く分かんないけど分かる所だけ分かったニクスが、その分かったところだけ聞いてきた。つまり今やってるゴブリン殺しは無駄なのかと。


「今のままだとね。でも、私も蒼炎でゴブリンをサクサク殺してたけど、動画の中だとちゃんとレベルアップしてたでしょ?」


 そう。それでも私はあの三ヶ月の中で、サクサク殺せてる時にもちゃんとレベルアップしてた。


「ど、どうすればいいの……? にくす、おねーちゃんみたいにつよくなりたい…………」


「んふぅ、にくしゅは可愛いなぁぁあ♡ ちゃーんとその辺も教えるから、安心してね♪︎ おねーちゃんに任せなさいっ」


「う、うんっ」


 がんばってゴブリンを氷像に変えては、通り過ぎざまにショートスピアで貫いて壊し殺して行くニクスの頭をくしゃくしゃ撫でる。


「それでさ、外でも少し触れたけど、ステータスの伸ばし方についても教えるね。これは私の憶測混じりで確証は無いけど、結構これも確信はしてるから、画面の向こうの皆様も、良かったら聞いて行ってくださいね」


 これも凄い大事な…………、と言うかぶっちゃけると今回の配信でメインと言える爆弾情報だ。


「お母さんもニクスも、ステータス評価については知ってるよね?」


「それは、もちろん……」


「えっと、…………きんにくと、まりょくと、かけっこのはやさと、あとはぁ……」


「ニクスちゃん、あと器用さと耐久よ」


「だって、おねーちゃん」


 そう。ステータスは膂力、魔力、敏捷、技量、耐久の五項目で、評価はG〜Sの八段階。


「これさ、皆は才能別に初期値が決まってて、その後は才能の数値分だけレベルアップ毎に評価が上がってくって思ってるでしょ?」


「………………え、それも違うのかしら?」


「うん、違う。だって私これ、レベル8の今でも魔力ならA評価だよ?」


 私のステータスは今、

 膂力C

 魔力A

 敏捷B

 技量A

 耐久C


 こんな感じ。


 で、銅級ダンジョンをクリアした時点で八段階評価の七段まで育つ? 上にまだ銀級と金級が残ってて、まだまだレベルが上がるのに? もう七段目?


 いや、ありえないでしょ。


「…………ッッえ!?」


「…………ほぇ? おねーちゃん、それってすごいの?」


「ん、このくらい凄い」


 ちょうど通路の先から、ギリギリ三桁いかない程度のゴブリン軍団が現れたので、強めに蒼炎を吹いて瞬殺した。ほんの数秒の事である。


「つまりね、八段階評価ってこれレベル毎の判定なんだよね。初期値が才能なのは多分正解だけど、その後はレベル毎の基準で評価されるんだと思う。例えばレベル2でも、レベル2の中でのA級やらS級に匹敵するステータスなら、ちゃんとそう表示されるはず」


 なので、いま私の強制配信をライブで見てる方々、そしてこの後に投稿された方を見る方々も、自分のステータスにGとかFとかEとかが大量に並んでるなら、相当に低い成長率である事を自覚した方が良い。


 たまに配信でステータス晒してる人居るけど、そのステータスは本当にヤバいからね。


 今日から、この勘違いの数々が是正される事を祈りながら、私はまだまだ授業を続ける。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る