改善とお肉と道場と。
四層でスローターし過ぎて、もう四層スローターのプロみたいになってきた私達。
新武器の存在も相まって、討伐速度がギリギリ、ギリッギリでヒートゲージの上昇率を上回り始めた。
政府が用意してくれた銀級ヒートゲージを24時間配信してくれてるDMアカウントを見てると、毎日毎日ミクロ程度はゲージが下がってる。
最悪、このまま続ければ銀級のヒートゲージをゼロにする事も叶うだろう。四層ドロップをギルドで売り払ってDDも大量に稼げてるし。
…………………………まぁ、何年後か分からないけど。
うん、やっぱ六層目指そう。
私も『何ヶ月』までは許容するけど、流石に『何年』もは無理だ。私だってお父さんに会いたいよ。
それに、浅田家両親はラブラブ夫婦なんだ。ご近所でも有名なのだ。そんなお母さんだって、お父さんに会えなくて結構キてるし、ニクスも甘えん坊だからそろそろお父さんが恋しいはずだ。
ナイトだってお父さん大好きだから、そろそろお父さんの投げたフリスビーで遊びたいはず。
つまり、私達は早く帰りたい!
そんな気持ちを抱いてる今日この頃、私は五層の調査です。
調査と言っても、もう六層への正規ルートみたいなのは見付けてしまってるから、もはやサナの町の穴場探しみたいになってるけど。
両手で別々の魔法を展開して練習しながら、サナの町を歩く。この町はやっぱり見た目より広くて、いくら見回っても新しい何かが見付かる。
光を出したり風を出したりする無害な魔法をタイムアタックの如く何回も続けながら歩いて、時折お腹が空く匂いを感じて屋台の串焼きを買ったりする。
「あ、美味しそう。おじさん、それください」
「あいよ! 二本で3DDだ!」
茶色い毛並みのケモおじさんから、日本で出したら爆笑されそうな程にデカい串焼きを二本貰ってモグモグする。串に打たれたお肉一つがこれ、私の顔くらいあるんだけど?
うーん、銀級五層まで来るアタッカーなら沢山食べるだろうし、それを見越したサイズ設定なのかな?
というか、このサイズで二本3DDって格安では?
「むぐむぐ…………、あっ、これコプトの肉だ。独特のスパイスが効いてて凄い美味しい」
「おう! ありがとよっ!」
思わず感想が口から漏れて、もふもふおじさんに拾われてお礼を言われてニコニコしちゃう。モグモグ。
…………え、待って、改めてめっちゃ美味しいんだけど? ビックリした。え、うまっ!? なにこれ美味しい!? 後からじわじわ来るぞこれっ!
「あ、えと、ごめんなさいおじさん。60DD分追加でください」
「あいよ! 嬢ちゃん見かけによらず食うなぁ!」
二本目をモグモグしながら60DD分の串焼きが焼き上がるのを待つ。
「ほいよ、焼け次第渡してっからよ!」
「ありがとうございま〜す」
順次焼けてく串を受け取り、モグモグしたりインベントリにしまったりする。
お母さんとニクスにも食べさせたいし、お父さんにも食べて欲しいな。
「ふふ、お父さんだったら串のお肉一欠片でお腹いっぱいになっちゃうかなっ……」
考えると面白くて笑ってしまう。
「そうだ、ねぇおじさん。この辺で何か面白い所ってない? 私、まだこの町に来たばっかりだからよく知らないの」
良い気分のまま、聞き込みもする。こんなに美味しい串焼きは初めて食べたし、ならばこのおじさんは初対面のはずだ。聞けば何か分かるかも知れない。
ちなみに、私はケモ度高いタイプのサナ族さんを見分けるのが苦手だ。毛並みの色が一緒だったらまず無理。なので「初対面のはず」なんて感想が出て来る。
「お前さんは、冒険者だろ? なら、そっちの横道を真っ直ぐ行ってから、突き当たりを右に進んでみなぁ。
ほう? 道場?
「そこは、武器の使い方を教えてくれたりするんですか?」
「そりゃぁ道場だからなぁ」
「大戦斧も教えて貰えますかね?」
「多分大丈夫だろ! なんたって武芸百般だからな!」
それはそれは、思ったより面白そうな事を聞けた。
銀級五層にあるサナの町。まだまだ楽しめそうである。
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