セット販売。
「えっ、おねーちゃんと別々の学校? 絶対やだよ?」
「だよねぇ」
夜、家で家族に飛び級の件を話した。そして真緒は夕食をもぐもぐしながら即答で拒否した。
「優子を想っての提案なら嬉しいが、権力争いに使われるのは腹が立つな」
「断ってしまっても良いのよね?」
聞いたお父さんは明らかに機嫌を損ねて怖い顔。お母さんはいつも通りだけど、内心はどうだか分からない。
「私も、飛び級自体は別に構わないんだよ。学校の友達だって休みの日に会えば良いんだし、教育のレベルが上がるのは単純にプラスだもん」
暇さえあれば、いや暇が無くてもアイズギアをフル回転させて様々な情報を仕入れ続けてる私の知識は、もはや年齢に対してトリプルスコアくらいの差をつけて蓄えられてる。飛び級の件を聞いてすぐに裏側を察せたのもそのお陰。
だから学びのレベルが上がるだけなら構わない。私にはプラスしか無いから。
だけどそれを何かしらのダシにされるのは嫌だ。私が通ってる学校の派閥が勝手に強化されるとか嫌すぎる。その派閥が私の知らないところで何をやらかすか分かったもんじゃないから。
「多分これ、まず私の使い勝手を良くしようって言う国の思惑が先にあって、それに学校関係者の派閥争いが乗っかった感じだと思うんだよね。流石に教育関係の行政がそんな大仰な暗闘するほどのポジションだとは思えないし」
「いや、分からんぞ? 教育大臣とその後釜狙いの誰かが暗闘してるって可能性もあるだろう」
「………………そんなことある?」
もう私には何も分からん。お母さんの料理が美味しい事しか分からない。豚ロースで野菜を巻いた肉ロールの煮込み焼きである。うまうま。
「て言うか教育大臣ってそんなに旨味のあるポジションなの?」
「大臣ってだけで国の中枢である事には変わらんだろう。それに、教育ってつまり国を支える若い世代に対する権利を握ってるに等しいんだぞ? 旨味が少ない訳が無い」
ああ、そう言う考え方も出来るのか。
自分が美味しい思いを出来る政治環境を作るのに、若い世代にメスを入れるってのは案外理にかなってるのかも知れない。学校の教師が特定の政治家を批判したり肩入れしたりって記事はSNSでも時折見かける。
「で、優ちゃんはどうしたいの? お母さん達は優ちゃん達がのびのびと学べるなら、好きにして良いと思ってるけど……」
「んー。私もマーちゃんと離れるのは
「おねーちゃんといっしょ!」
「ねぇ〜♡」
「ねー♪︎」
すかさず可愛い真緒とイチャイチャする。だってお姉ちゃんは真緒を一生可愛がる刑に処されてるからね。別の学校とか冗談じゃない。
「そも、真緒は優子よりレベルアップの学力向上が大きく無いが、真緒も飛び級して大丈夫なのか?」
「どうなんだろうね? 私としてはマーちゃんに無理して欲しくないけど」
「んー? まおは、前よりお勉強できるようになったよ?」
うん。記憶力は上がってるだろうね。レベルアップしてて知性が全く伸びてないなんて事は無いだろう。もしあったら純然たる脳筋プレイだけでレベリングした変態くらいだろうし。
「だとしたら、小中高一貫型の場所が良いんじゃないか? 真緒は小学生高学年くらいに飛び級して、優子が中学か高校くらいに飛べば良い。同じ学校なら行きと帰りは一緒だろうし、学年が違うだけなら今と変わらんだろ」
ふむ。確かに? 違う教室で授業を受けるって点では前と変わらない。登下校で一緒にイチャイチャ出来るなら問題無いのかも知れない。
幸い、私も真緒もアイズギアを使いこなしてる勢であり、学校の友達と連絡先はバッチリ交換してある。遊びに出掛ける約束だって簡単に出来るし、移動も別に困らないもんな。
私にはナイトが居るし、私も真緒も行き帰り全行程をタクシー使っても痛くないくらいに稼いでる。私達一家って、全員の所得を合わせたら世界の富豪ランキングぶっちぎりそうなお金もってるんだよね。まだ換金してないDDとかも合わせれば、だけど。
「だとしたら、姉妹セットで飛び級して良い場合に選べそうな学校は…………」
真緒が中学に行けると過程して、中学附属高等学校を付近で検索する。すると結構な割合が私立で条件的に符合しなかった。国の権力通すには公立である必要がある。いや詳しい事を知らないから断言は出来ないけど、多分そう。
それでも残った物を見ていくと、付属校って言うと女学院が多かった。ふむ、女子校か…………。
「あ、ここ制服が可愛い」
「どこどこー?」
私の呟きを拾った真緒が反応したので、データを送信してあげる。
「あ、ホントだ可愛い! まお、ここが良いな!」
「…………マーちゃん、飛び級自体には乗り気なの?」
「……………………うん」
聞くと、私のせいで学校では浮いててちょっと辛いそうだ。マジかよ許さんぞ一年共が。私の可愛い妹をハブるとか許されんよなぁ?
「あ、まっておねーちゃん。そう言うんじゃないの。だいじょぶ、だいじょぶ」
「そうなの? もしイジメとかあったらすぐ言うんだよ? 教室ごと焼き払ってあげるから」
「うんっ、ぜったい言わない!」
なんでや! お姉ちゃんが真緒の敵を焼いてあげるって言ってるのに!
「優子、今の真緒なら自分でイジメっ子を氷漬けに出来るんだぞ」
「あなた? 言及するべきはそこじゃ無いのよ?」
浅田家は今日も平和です。
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