ごひゃくえん。
凄く悪い言い方をすれば、メイド喫茶とはメイドさんが愛想を振り撒く代わりに、その対価として
うん、悪く言えばだよ? サービスの内容によって料金が
もちろん客側もそれを理解した上で楽しむ場所であり、メイド喫茶とは相互理解で成り立っている。
いや、普通の料金で楽しめる場所も普通にあるかも知れないけど、それだとメイドさん達のお給料と業務内容を考えると、普通の飲食店でバイトした方が楽って結論になる。だから多少高くても仕方ないのだ。
それで、だから、本当なら幼女二人だけで訪れる場所では無いんだよね。メイド喫茶って。
それでも来店してしまった私達。『指名したメイドさんとジャンケンなどの簡単なゲームをするだけでワンコイン以上がバンバン吹っ飛んで行く』サービスを幼女に説明するのは、かなり酷だと思う。
真緒は見るからに純真な可愛い女の子なので、メイドさんとジャンケンをする代わりに五百円かかりますとか言われても、「???」ってなるだろうし、メイドさんも困るだろう。私も困る。
「真緒。このメイドさんゲームは大きなお兄さんの為のゲームみたいだよ」
「あ、そっ、そうですね! こちらは大きなご主人様がお喜びになる物になります♪︎」
「えー、まおはダメなの……?」
見かねた私が助け舟を出すと、メイドさんはすかさず乗ってくれた。ただ『メイドさん♡げ〜む』と書かれて楽しそうなメニューが遊べないと言われた真緒はしょんぼりしてしまい、それはそれでメイドさんが慌ててしまうのだった。
「真緒、マーちゃん、ほら、お姉ちゃんのお話し聞いて?」
「なぁに?」
「これはね、大きなお兄さん達の為のメニューだからね、一回遊ぶだけで沢山お金がかかるんだよ。マーちゃんが本当に遊びたいならお姉ちゃんが幾らでも出してあげるけど、マーちゃんは本当に遊びたい? ただジャンケンとか指遊びとか、簡単なゲームだよ?」
店内は言うほど広くなく、しかし客入りはなかなか良くて、幼女二人だけで来ている私たちは凄く目立っている。燃えてるナイトも居るから余計にね。
ナイトはこういう時、とてもお利口なので絶対に吠えない。
私たちが乗れるくらいに大きくなれたナイトは、同じようにぬいぐるみサイズまで小さくもなれて、今は私の腕の中で大人しく抱っこされている。
そんな目立つ私たちがメイドさんとわちゃわちゃしてれば、更に目立つので物凄く見られてる。お客さんにもメイドさんにも。
「……そうなの? じゃんけんなの?」
「そうそう。で、メイドさんに勝つと、一緒に写真が撮れたりするの」
「…………それだけ?」
「うん、それだけだよ。大きなお兄さんたちには、それが凄く嬉しい事なんだけど、マーちゃんはよく分からないでしょ? それでも本当に遊びたい? 遊ぶならお姉ちゃんが何回分でもお金出すけど、一回五百円だよ?」
「うーん……、それで、ごひゃくえん? うーん…………」
悩んだ末、真緒はメイドさんゲームを諦めてくれた。
浅田家は裕福な家庭だけど、それでも常識的な教育方針なのでお小遣いは普通の額だ。
だから七歳の真緒にとって、五百円はそこそこに重い額だと思われてるし、その金額で指遊びが一回だけ。勝ったらツーショットという内容に納得出来なかったのだろう。
大きなお兄さん達にとっては「えっ、たった五百円でメイドさんとジャンケンできる上に勝ったらツーショット!?」となるらしいけど、彼らの感性は幼女と違うのだ。
「じゃぁ、普通のものをメニューから選ぼうね」
「うんっ! メイドのおねーさんも、ありがとぉ!」
にぱぁって笑う真緒の笑顔に癒される。メイドさんも笑顔がモニョモニョしてる。良いでしょ、可愛いでしょ? この子私の妹なんですよえへへへ。
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