第5話0005★黒き鼠の王、本音が漏れる



 冷然と答える言葉に、国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王は言い募る。


 「そのような者、いや

  姫ばかりではあるまい


  我が正妃となり

  栄耀栄華を楽しみたいと思う


  姫もおるやもしれぬだろうて…………


  身分の低い姫ならば……国母となり

  我が国で一番の地位になれるのだぞ」


 あくまでも、自分の常識と感性でモノを言う、国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィアに、鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは首を振って嘆息しながら言う。


 「それは、そなたの国の常識だろう


  我が国では、同じ時を刻めぬ者を

  婚姻相手とは決してせぬ


  長き時を生きる故にな…………

  そなたとは、生きる常識も時も

  《力》も違う。帰りなさい」


 一向に話しになびかない鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイに、

国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王が、本心そのままに言い募る。


 「そなたの国と我が国が手を組めば

  この大陸全土を支配するのも

  簡単に出来る


  その証しに姫を、我に…………」


 「黒き河の国の王よ


  我らは大陸を統一せんと戦を起こし………

  その覇道の途中で滅びた国を

  幾つも知っているのだよ


  この大陸を統一した国は

  いまだかつてない


  過ぎた野心は、持たぬことだ」


 「我が国こそが

  初めて大陸を統一する国となる


  そなたら飛翔族は

  観ているだけではないか


  なぜ、戦わぬ

  その《力》はそなたらには

  過ぎたモノではないか?


  必要ないモノならば

  我に、寄越せ」


 いきどおり、噛み付く国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王に、鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは哀れみを瞳に浮かべながら言う。


 「その精神では

  我ら飛翔族の《力》に

  耐え切れぬ。帰りなさい」


 「試してみぬうちから

  決め付けるなっ

  判った帰る」


 このように、平行線を描く会話を、何度もしながら、ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王は、婚姻の申し込みを何度となくした。

 が、そのたびに飛翔族の鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイに断られたのだった。






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