第3話0003★迷惑な婚姻の申し込み



 国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王は、世継ぎを飛翔族の血を引く王子にしたかったから、飛翔族の王に、婚姻の申し込みをした。


 「輝く峰の国の飛翔族の鳳皇ほうおう

  ラー・シン・ビャクレイよ


  飛翔族の王家の姫を我が正妃にしたい

  大切に、国母と成す故に嫁がせて欲しい」


 が、その婚姻の申し込みに、飛翔族の鳳皇ほうおうは決して姫を嫁がせるとは言わなかった。


 「貴方との婚姻は、無意味だ


  我が飛翔族は他種族との交雑で

  子はほとんど成せぬ


  偶然にも子供が生まれたとしても

  その子供の寿命も《魔力》も体力も


  生み出す母親の半分にも満たない

  寿命が違いすぎて不憫なコトになる


  まして、産んだ母親は、かならず

  我が子や孫やひ孫が自分より先に

  年老いて死ぬのを、見てしまう


  ……故に、この申し出は断る」


 国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王は、結納の品として、金塊や宝石などの財貨と麗しい布や毛織物や絨毯etc.を馬車十台程に積んで持って来ていた。


 大国と言われている国の国王の正妃になれるという、破格の申し出を断る国王はいないと思っていたのだ。


 「母親より寿命が短いし

  《魔力》も体力も半分になると

  貴方は言うが


  実際に婚姻して

  子供を生してみなければ

  それは判らないではないか?


  私と姫の相性がよければ

  通常の寿命・魔力・体力で

  生まれるかもしれない」


 希望観測というよりは、願望の凝り固まったセリフに、鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは、首を横に振る。


 「我が姫は、全て婚約している

  貴方に、嫁がせる義理も無い

  速やかに、帰るがよい」


 いっそ冷徹とも取れる口調で断るが、なおも食い下がる。


 「貴方の正妃の姫が全て

  婚姻が決まっているならば………


  試しに、王族とは名ばかりの

  身分の無い愛妾が産んだ姫でもよいから


  嫁せてくれてもイイではないかっ」


 鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイは、にべもなく言い放つ。


 「これ以上、話す意味が無い

  その迷惑な荷物を持って

  即刻、帰るがよい」


 取り付く島すらないその言葉に、 国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王は、苦虫を噛み潰した表情で言う。


 「今回は、帰るが

  次は、色よい返事を貰いたいものだな」


 この大陸にある国々の中でも、五指には入る領土と人口を有する

 我が国の正妃にと、わざわざ申し込みに来てやったというのに……


 この大陸一番の古き国の国王とはいえ、我の申し出を断るなぞ……

 いや、ここで怒ってはならん


 飛翔族の力の源である血を、姫を、手に入れる為には

 下手したでにでるしかない


 いずれ、その《力》を手に入れた暁には

 その傲慢な態度を、後悔させてくれるわ


 懲りる事が無い国王ジャアハード・ムハーリ・ハーリィア黒き鼠の王は、激怒している内心を何とか隠して帰っていった。



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