第170話0170★樹海が切れた先は、礫砂漠《れきさばく》だった


 白夜を腕に、リオウと一緒にひたすら走り続けて………数時間後。

 神護は、目の前に広がる光景にガックリしていた。


 小川が途中で地下へと潜ってしまい。


 神護は頼るモノが無くなったので、当てずっぽうで樹海もどきの森林が切れていそうな方向に向かって走り抜けたのだ。


 その先にあったのが、今、目の前に広がる礫砂漠れきさばくだったのだ。


 一緒に楽しく走っていたリオウは良い運動をしたとばかりに、足を止めた神護の側で長々と伸びて、上機嫌でゴロゴロしていた。


 「マジかよ…森林が切れた先が、砂漠って……」


 そう呟いた神護は、ちょっと嘆息し、腕輪の中のホタルに呼びかける。


 「ホタル《召喚》」


 神護の呼びかけと同時に、腕輪の石からホタルが小さい姿で現われる。

 そして、茶目っけを出して、リオウの頭の上にとまる。


 リオウは気にした風もなく、大きくアクビをして、双眸を閉じてしまう。

 神護と比べれば、かなりの巨体だが、所詮は幼体なので、疲れが出たらしく、無意識に丸まって、クウクウと寝息を立てながら、気持ち良さそうに眠ってしまう。


 神護という、安心できる者の庇護に包まれて、リオウは眠りの国の住人となってしまっていた。

 それを見ていた神護は、そのこころなごむ光景に、ふっと優しく笑う。


 神護は、優しく笑った後、リオウの頭にとまったホタルに向かって言う。


 「ホタル…ここが【竜ケ峰りゅうがみね】を降りた

  どの辺りかわからなくて、困っているんだ


  俺の視界と、ホタルと視覚をリンクするから

  ちょっと周辺を見てきてくれないか?」


 ホタルは神護の言葉に頷く。


 『はい マスター…では 上空から 現在地を確認いたします』


 「んじゃ頼むわ《接続》」


 その詠唱破棄の短い呪文を、神護が唱え終わると同時に、ホタルはリオウの頭から飛び立ち、重力を無視したような急上昇をする。


 ホタルの重力のことわりをまるっと無視した

 見事なまでに、垂直に近いの飛翔を考えると……


 《魔力》による補助での急上昇か……

 風の精霊の補助でもありそうだな


 そう言えば、こっちっているのか?

 精霊とか、妖精とかの類いって…存在しているようだからな

 白夜が、風の精霊が集まるって言ってたしな


 幻獣とかいるんだから………

 もしかしたら、全属性の精霊、存在しているかもな

 後で、白夜に聞いてみよう


 神護は軽く頭を振って、丸まったリオウに寄りかかるように座り込んだ。

 勿論、腕に抱いていた白夜は、膝へと移動させたことは言うまでも無い。


 リオウに寄りかかった神護は、双眸を閉じて、ホタルの視界へと意識を切り替え、映し出される光景を見詰める。


 かなり大規模な霊峰【竜ケ峰りゅうがみね】の全体像を、かなりの高高度から見下ろす。

 その視界には、延々と続く樹海もどきが見えた。


 ところどころにポッカリと空いた空間はあるが、大半は色の濃淡はあるものの、深い緑色をしていた。





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