第171話0171★高高度からみたら、ふもとの街とは反対側でした


 視界に映る緑色の稜線が途切れた先は、夜明けまでもうしばらくある暗闇のなかでも、ほとんどが砂漠であることが判った。

 そして、もう1つ判ったことは、神護が白夜を抱えて降りた場所は、街とは真反対側だったということだった。


 「…マジ…かよ……」


 思わず、そんな呟きが神護の唇から零れ落ちる。


 あの小川の最初の選択を間違えたってことか?

 …にしても、モロに反対側かよ…………


 樹海もどきの稜線を辿って街に向かうのは…無理だよなぁ……


 第一、白夜の種族・飛翔族の敵の兵士達らしき者達が

 ごっそりと居そうだ


 ここは、今居る場所から1番近い砂漠の中の街道を探して

 別の街を目指そう


 幸い…距離感はわからないが……ここから北西方向?に

 樹海モドキの稜線にかなり近い部分に、砂漠の街道らしきモンが

 見えたからな


 それに、砂漠ン中に街らしきモンがあったし

 反対側ンなっちまった街へ行くより近そうだ


 とりあえず、上空から見るとこんな感じか

 白夜が起きたら、どうするかを決めよう


 神護は、閉じていた双眸を開き、全体を見渡せるようにと、かなりの高高度まで上昇したホタルを心話で呼び戻す。


 [ありがとう、ホタル…もう十分だ

 ハンターや敵に見付かる前に 戻ってくれ]


 [はい マスター]


 ホタルの心話による返信を受け取り、神護はちょっと小首を傾げる。


 そういや…忙しくて、ここのところホタルの卵撫でてないな

 ちょっと休憩がてら、撫でてるかな?


 神護は膝に白夜を乗せたまま、腕輪からホタルの卵を1つ出して、かいぐりはじめた。


 1つ出しては、きちんと健康な幼体で誕生できるように祈りながら、優しく撫でる。


 十分に抱き締めて、愛情を注いでから腕輪にしまう。

 その行程の繰り返し、神護が3個目の卵を撫で撫でしている頃に、ホタルは戻って来た。


 その口と手足に、かなり大きな獲物を携えて………。

 当然、本来の大きさになっていたことは言うまでもない。


 ぇ~……〈ドラゴン・ソウル〉状態でも獲物って獲れるんだぁ…


 などと、神護が感心している先で、ホタルが言う。


 「マスター…ただいま戻りました

  現在位置を確認するついでに 少し獲物を獲って来ました


  獲ってきたモノで 食べてみたいモノがありましたら

  召し上がって下さいね


  今食べないモノは 腕輪の中にでも放り込んでおいて下さい


  もしも 子供達が孵ったら とても食べると思いますので……

  機会をみて 獲物をかき集めます


  あと 子供達への愛情 ありがとうございます」


 神護が、卵の1つ1つを、丁寧に撫でさすり、抱き締めて愛情を注いでいるのを見て、ホタルが嬉しそうに言う。

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