第172話0172★半実体でも、獲物は取れるようです



 「ああ…今はお腹がいっぱいだから、後で分けてもらうよ

  とりあえず、腕輪に全部放り込むな


  ホタルは、もう戻るか?それとも、もう少し探索でもするか?

  俺は、全部の卵を撫でたら少し寝ようと思うが…………」


 神護の言葉に、ホタルはちょっと小首を傾げてから答える。


 「では マスターが眠りに入るまで もう少し獲物を獲ってきます」


 そう言って飛び立つホタルを見送った神護は、再び卵を取り出して、撫でて抱き締めて愛情を注ぐを繰り返すのだった。

 本来の大きさに戻って、悠々と獲物を狩りに行くホタルを見送りながら、神護はちょっと不思議そうな表情で首を傾げていた。


 あの大きさ見て、今思い出したけどホタルって

〈ドラゴン・ソウル〉なんだよなぁ…


 魂魄になっていて、実体は無いはずだよなぁ?

 ホタルの骨やウロコを含む本体って腕輪の中に入っているんだよな


 なのに、獲物がああも簡単に獲れるってことは

 〈ドラゴン・ソウル〉って半実体ってことか?


 側に積まれた獲物達を見て、神護は不思議そうに首を傾げる。

 その間も、当然のように卵を撫でていた。


 ちなみに、ホタルが半実体化するほど充実しているのは、腕輪を嵌めた神護から溢れ出ている生気や《魔力》が勿体無いと、ホタルが一生懸命、そとに零さないようにと吸収しているからである。


 そうでなければ、生気や《魔力》がダダ漏れしている神護に、この【竜ケ峰りゅうがみね】に巣食う、あらゆるモノがきつけられてしまうからだったりする。


 〈ドラゴン・ソウル〉本体である腕輪をしている限りは、神護の生気や《魔力》がダダ漏れすることはないので、ホタルは忠告することを思いつかなかったのだ。


 ちなみに、ホタルの卵達は、普段、神護の生気と《魔力》に満ち溢れた腕輪のにいる為、停滞していた成長がうながされ、スクスクと育っている。


 勿論、腕輪の中から出されて、撫でられ、抱き締められて、愛情を注がれる時間は、とてつもない至福の時だったりするのだ。


 神護は、撫でて抱き締め、愛情を注ぐイメージを与えると、ほんのり卵の温度が上がることに、早くから気付いていた。


 卵を丹念に、思いを込めて撫でた後、抱き締めながら、愛情を注ぎつつ、心の中で呟く。


 孵化するのに必要なのは、愛情と…たぶん…親が注ぐ新鮮な生気が

 必要なんだろうなぁ…


 ホタルが生気を与えられないぶんは

 俺が、たぁ~んとお前達に注いでやるな


 どんな子飛竜が孵るのかを楽しみにしながら、神護はひたすら卵達を出しては、撫でてから愛情を注いでいた。


 その間、ホタルは卵から孵った時の為にと、必死で食料となる獲物を集めていた。

 なんと言っても、神護が満遍なく卵達に愛情を注ぐので、孵化にほとんどズレはないだろうと感じていたからである。


 何度も往復し、獲物を狩っては持って来るをただひたすら、繰り返していた。


 そして、神護が最後の卵を腕輪にしまうと同時に、ホタルは元の小さな姿となって言う。


 「ただ今戻りました マスター いちいち1頭ずつ

  腕輪に入れるのは 面倒でしょうから……腕輪を外して

  私のを取り込んだ時のように 獲物の山に翳してください」




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