第66話0066★神護は今日も呼ばれる



 森林の中で与えられたモノによって、ぶっつりと意識が切れた神護は翌朝、自宅のベットでごくごく普通に目覚めた。

 胎児のようにまるまるようにして、卵を大事そうに両手で包んで眠っていたのだ。


 神護は、わりと獣的な目覚め方をするほうなので、パチッと眼を開いたときから、かなり明確に意識が覚醒かくせいしていたりする。


 いや、たるい時や微睡まどろみたいときには、トロトロと意識を覚醒かくせいさせずに、その時間を楽しむのだが………。


 自分の普段とは違う寝姿と、手の中に何かを握っているような感触を感じて、きっちりと意識を覚醒かくせいさせたのだ。


 ソッ手の中の卵を片手に移し、起き上がった神護は胡坐あぐらをかいて、手の中にある卵を見て無意識に呟く。


 「なんで、卵なんて持っているんだ?」


 そして、その手の中にある卵に首を傾げるのだった。


 不可解そうに呟いた神護の手の中の卵は、ほのかにうっすらと青白く発光する表面に、不可思議な紋様が描かれていた。


 が、他の装備は一切、その場に現れなかったことと、膨大な情報量と《力》の為に、意識が吹っ飛んだことで、神護は飛ばされた先で起こったコトを、綺麗さっぱりと忘れていたのだった。


 ただ、意識の片隅に【守護者】と卵を無事孵化させて……と、いう言葉が残っていた。


 だから、神護は手頃な巾着袋に、不可思議な紋様が描かれた卵を入れ、首から下げて無意識に持ち歩くようになっていた。

 そして、その行為をおかしいとは微塵も思わない神護だった。


 さらにいうならば、神護には物質化して卵として見えていた。

 が、実際には神護の生きる世界で、卵は物質化していない霊体のままだったので、誰もその卵の存在に気づくことは無かった。


 ただし、神護はそのコトに気づかなかったが………。

 そう、神護以外は、霊体の卵だったので、誰も気づかなかったのだ。


 そして、今日も今日とて神護の忙しい主婦としての日常が始まる。




             ***




 ビャクヤに、卵と膨大な知識と《力》を譲渡された神護は、現実世界はわりとつつがなくすごしていた。


 ただ、夜の就寝時やうたた寝などで、意識を手放すと、やはり頻繁に夢の世界へと引きずりこまれていた。


 流石に、この頃になると、神護も現実世界で起きている時でも、自分が誰かから卵を預かったことに気が付いていた。


 そして、その卵が、神護が生きる現実世界では実体がない、いわば、霊体のようなモノだというコトにも、その頃には気が付いていた。


 ただ、その霊体と言っても、ピンキリなのだが…………。

 神護とあまり変わらない霊能力を有する竜治が、その存在に気づかないので、神霊しんれいいきにある高次元のモノと認識していた。


 そして今日もまた………。

 午後の昼下がり、異様な眠気に誘われ、神護はベッドへと入った。


 そして、眠りは直ぐに訪れた。

 すぅーっとちて行くのを感じた時には、意識がぷっつりと切れていた。





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