第191話0191★李紅《りく》という名の果実
神護が大樹から落ちたドングリを見ながら、そんなことを考えている間、白夜は周辺を探索していた。
勿論、リオウは白夜の後に付いて歩いていた。
白夜が疲れたら、背中に乗せて神護の元に帰って来る予定で…………。
リオウから見た白夜は、自分より遥かに幼い固体なので、とても危なっかしく感じるのだ。
絶対に安全な
もし、白夜が、そんなリオウの内心を知ったら、とても不服に思っただろう。
が、
それよりも、神護から自由に探索して良いという言葉をもらった嬉しさで、湧き水の周辺をほてほてと歩いていた。
〔……ぅん? あれって……〕
白夜は見知った果実の樹を見付け、思わず走ろうとして、つんのめる。
ガクンッとした時には、リオウにマントの後ろ首付近を噛まれて、ぷらぁ~んとしていた。
うるぅぅ~……クルクル……
まるで、不注意をたしなめるようなリオウの声に、白夜はガックリする。
〔あぅぅぅ~ 我を忘れてしまった 結果がコレか はぁ~……
流石に 我ながらなさけないな このヒールと呼ばれている
たぶん このドレスと揃いの 少女用の履物は 歩きづらい
着用し慣れていないモノだから かなり気をつけていたけど
たわわに実った
今の自分の姿や能力などを忘れて つい走ってしまった〕
リオウに襟首を銜えられてプランプランしている白夜は、思わず溜め息を零した。
そこに、ゆっくりと歩いて来た神護が到着し、問い掛ける。
「どうした? 白夜」
何時もと変わらない口調での問いに、白夜は拗ねたような口調で言う。
「父上ぇ~ あちらにとても良く熟れた
走り出した途端 慣れない履物のセイで 足が
こうなりました」
とてもなさけ無さそうな白夜の言葉に頷き、神護はリオウに襟首を銜えられた白夜を抱き上げる。
そして、リオウの背中にチョンっと座らせる。
「まっ…孵化したてなんだから、それはしょうがないな
まして、履き慣れない女物のローヒールだからなぁ
ありがとな…リオウ……これからも頼むな」
うるるぅぅ~……くるるるるぅぅ~……
リオウは、得意げに胸をはり、甘えるように少し高めに喉を鳴らす。
そんなリオウの頭を撫でてから、神護は腕に抱き上げた白夜が言った
へぇ~………ここまで来ると…かなり甘酸っぱい香りがするな
あれが
ん~…見た目は、リンゴに近いけど……さて……味はどうかな?
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