第204話0204★もしかして《むかご》を発見?



 神護の言葉に、前を歩いていた白夜は立ち止まり、くるっと振り返ってふわりと笑う。


 「はい 父上」


 そう答えながら愛らしい仕草で神護に向かって手を伸ばし、抱っこをねだる。

 神護は、両手を伸ばして、白哉をひょっと抱き上げ、左腕に座らせる。

 白夜は、左腕に乗せられた段階で座りやすい位置を探し、神護のマントをキュッと無意識に掴む。


 「少し走るぞ……眠ければ寝ちまえ……クスッ……俺達のほうじゃ

  寝る子は育つって言うからな……

  一眠りしている間に、また背中の翼が育つかもな」


 神護を見上げていた白夜は、そのセリフに小首をこてんと傾げて言う。


 「そうなったら嬉しいです」


 そう言って、白夜は神護の胸に縋るようにして、その瞳を閉じる。

 寝る体制に入った白夜の頭を右手で撫でた神護は、真剣な表情になって側に控えているリオウに声をかける。


 「行くぞ、リオウ」


 神護の呼び掛けに、リオウは喉を軽くクルルっと鳴らして応える。

 それを確認して、神護は走り出した。


 走り出して2時間ちょっとぐらいのところで、神護は大樹の絡み付く見覚えのあるハート形の葉っぱを見て走る足を止めた。


 あっ…これってぇ? ……っと…おお………やっぱり……そうだ…

 やったぁ~…《むかご》がなっているじゃん………てぇ~とぉ……

 この蔓を辿れば、天然の山芋が、どこかにあるはずだな


 それにしても、こっちの……ファンタジー世界の《むかご》って

 俺が知っているモンより、かなぁ~り大きいよなぁ


 いや、ハート形の葉っぱにしろ、このどこまでもえんえんと続く

 芋蔓にしろ、とにかく大きく長いよなぁ~………


 そう言えば、バニラシードの蔓も、やたらめったら長いし太いし

 種が入ったサヤも、かなり大きかったな


 じゃなくて……こっちって、俺達の主食のお米ってあるのかなぁ?

 あとで、タイミングを見計らって聞いてみようかな?


 神護き《むかご》の1つを手に取り、マジマジと見る。

 普通は、親指と人差し指で摘める程度の大きさの《むかご》は、神護のこぶしほどの大きさのモノが、そこかしこになっていた。


 普通は、素揚げや炊き込みご飯とかにすると美味いんだけど………

 いや、マジでお米あるのかな? あるなら炊き込みご飯したいなぁ


 それにしても《むかご》がこれだけ大きいと、炊き込みは無理かな?

 まぁ、この大きさだから、かなり食べがいはありそうだけどな


 この大きさだと……煮物かな? ふむ、蒸しても良いかも

 こうなると、塩コショウも欲しいな


 いや、たしかに醤油もどきの《ショウ》でも美味しいとは思うが……


 あっ……どうせなら、バターも欲しいかも………じゃなくて

 白夜を起こして、コレのことを聞いてみるか………


 神護は、ちょっと首を傾げてから、腕の中で眠ったままの白夜を優しく揺り起こす。


 「白夜…白夜……ちょっとだけ、起きてくれないかぁ?

  良いモノを見付けたんでな………」






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