第33話0033★最後の隠れ家 禁断の魔術書【転生術】の結果は?




 しばしの休息の後、ビャクヤはパチッと双眸を開く。


 差し迫る追っ手の危機感から、飛翔族の王都・輝く峰の王国に侵略の手が伸びてから、ビャクヤは本当の意味ではろくに睡眠をとっていなかった。


 食事も、基本的に必要最低限しかとっていない。

 唯一の楽しみは、ぶどう酒というような日々である。


 早々に改善しなければ、身体を壊しかねない生活であった。

 が、ヒシヒシと感じる危機感が、ビャクヤに安寧あんねい享受きょうじゅすることを許さなかった。


 ビャクヤは、お気に入りのぶどう酒を杯に入れ、干し肉や乾燥野菜などを、無造作に口に運ぶ。

 なんとも、粗末な食事である。


 が、唯一の嗜好品であるぶどう酒以外は、あまり味というモノを感じなくなっているので、腹が満ち、動けるエネルギーさえあれば良いと思っているビャクヤだった。


 手早く、とりあえずの栄養摂取をすませたビャクヤは、最後にもう1杯のぶどう酒を楽しみ、食事?を終わらせる。


 「さて もう1度読んだら

  これも廃棄はいきするしかないな


  貴重な魔道書ではあるが

  流石に 書かれている内容が


  黒魔術系の《転生》についてだからな

  貴重だが 残せるモノではない」


 ちなみに、魔道書ではあるが、この世界ではそれを持ち歩き、魔道書を使って《魔力》を使うという方法は使われていなかった。


 魔道書や魔術書と呼ばれるモノは、過去に創製された魔術や魔法という類いの集大成である。


 また、ビャクヤは、記憶したモノを水晶などに《封印》することもできるのだ。

 ようするに、書物である必要は無いのだ。


 事実、皇太子に正式に任命される前に、王城よりチョコチョコと外出していたビャクヤは、そういうモノを身につけていた。


 ちなみに、現在の愛剣の柄にはめ込まれた複数の宝石には、実は、ビャクヤの集めたそういう貴重な資料の膨大な記憶が《封印》してあるのだ。


 もちろん、ビャクヤの《力》も盛大に注いである。

 《力》の方は、鞘の宝石にも《封印》されていた。


 ビャクヤは、腰に下げていた愛剣を手に取り、記憶した禁断の魔術書【転生術】の全てを、宝石の中へと挿入する。


 「よし これで 何時でも

  禁断の魔術書【転生術】の内容は

  この宝石の中から取り出せる


  あらためて 読み返したら

  残念だが これも処分しよう」


 コトッと愛剣をテーブルの上に置き、ビャクヤは再び禁断の魔術書【転生術】を開いた。




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